アルバムのための期限付きの制作期間を設けずに、いい曲ができたら、レコーディングしていくという方法で完成した、2年ぶりのニューアルバム。1曲録ってみたその時の感触で、セルフプロデュースのアルバムにすることを決めるなど、思うままの方法で制作された。バンドで最初のアルバムを作る時のような高揚感があって、第三者からのプレッシャーがない環境が、衝動感を保つことにも繋がっていたのだろう。シングルの“イト”や、NHK『みんなのうた』でOAされた“おばけでいいからはやくきて”等を含む全14曲が、勢いのある短編集のように編まれていく。相変わらず、愛想を尽かされたり、後悔しきりのダメなやつを、愛すべきキャラクターに見せてしまう魔法が効いた曲も揃っているし、本音にさらに毒を纏わせるとげとげしさも、シニカルさにも、筆がのっている。そんな中で際立つのが、まっすぐに愛を歌う“燃えるごみの日”のピュアな美しさ。ささやかな日々を特別に変える音楽、そんなふうに音楽で日常にスポットライトを当てるのが、やっぱり上手いバンドだなと改めて思う。(吉羽さおり)