衰えないクリエイティビティ

ザ・フレーミング・リップス『キングス・マウス』
発売中
ALBUM
ザ・フレーミング・リップス キングス・マウス

今年のRSD(レコード・ストア・デイ)に限定アナログ発売された作品がめでたくCD化。彼らが地元オクラホマで2011年にスタートさせた複合芸術施設/ギャラリー向けのインスタレーション・アートがベースになっており、これは観客が『未来惑星ザルドス』めいた「王の口」なる大型シリンダーの内部に横たわりLED+ビデオ+サウンドによるマインド・トリップを味わう視覚/聴覚/触覚を刺激するマルチメディア体験という(想像するにリップス流「ドリームマシーン」?)。同作の背景文脈を補足するためのストーリーボードとしてウェインが描いた連作絵画を軸にコンセプトが発展しインスト曲だけではなく歌、そしてクラッシュの御大ミック・ジョーンズによる「語り」も含めたアルバムとしてまとまったのが本作――とまあ説明するとややこしいが、『ヨシミ~』のコンセプト性および自主映画『クリスマス・オン・マーズ』の野心を凝縮させ、異なる形で追求した1枚と言えそうだ。

誕生と死をめぐるシュールなストーリーは実にリップスらしいし、それをおとぎ話として設定したことで音楽的にはコズミックなエレクトロ~プログレと中世/宗教音楽を志向している。秀逸な⑥⑦⑧を筆頭に未来と過去が時に溶け合い時に衝突する、新鮮なのに懐かしい奇妙な音空間が生まれているが、絵本調の古風なナレーション(ニルソンの『オブリオの不思議な旅』を思い出します)とフォーキィな歌メロの無垢な美はこのバンドの推進力である童心――「映像作家、画家、芸術家とのコラボ」ではなくDIYで一から作り上げてしまう彼らは「境界」を知らない好奇心いっぱいの子供のようだ――を再認識させてくれる。前作『オクシィ・ムロディ』の沈痛なトーンではなくポジティブな作風なのも嬉しいし、彼らの前進はまだ続いている。 (坂本麻里子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ザ・フレーミング・リップス キングス・マウス - 『rockin'on』2019年10月号『rockin'on』2019年10月号
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