天井知らずの機動性と躍動感

バトルス『ジュース・B・クリプツ』
発売中
ALBUM
バトルス ジュース・B・クリプツ

そのベース・プレイとエフェクトワークでバトルス・サウンドのスリルの一翼を担っていたデイヴ・コノプカが昨年脱退。4人でキャリアをスタートしたバトルスはイアン・ウィリアムス&ジョン・ステニアーの2人編成となった。が、そんな重大局面がもたらした「バトルス解体&再構築」は結果として、彼らの肉体性と構築性をより変幻自在でハイパーな次元へと導くに至った――ということを、4年ぶりとなる4thアルバムは如実に伝えている。

NYノー・ウェーブ・シーンの象徴的存在=サル・プリンシパト(リキッド・リキッド)を迎え、ポップでアバンギャルドな色彩感をミニマルなビートの構造体へと結晶させた先行配信曲“タイタニアム・2ステップ”。ジョン・アンダーソン(ex.イエス)の唯一無二のエンジェル・ボイス&台湾発エクスペリメンタルの精鋭:落差草原 WWWWのサイケデリアを、カットアップでもマッシュアップでもなくバトルス・サウンドのパースの中に配置してみせた“シュガー・フット”。シャバズ・パレセズと描くアンダーグラウンド・ヒップホップのミステリー“イズム”……同じく多数のフィーチャリング・アーティストを迎えて制作された2nd『グロス・ドロップ』での「異種格闘技」感とは趣を異にし、ジャンル無用のコラボレーションも含め自由闊達な音楽探求を繰り広げることで、バトルスの核心たるビートの強度と生命力をくっきりと浮かび上がらせることに成功した、マジカルなまでに痛快な進化作だ。アルバムの幕開けを飾る“アンビュランス”の極彩色のカオス感といい、テクノとインダストリアルの破片が快楽の異境を編み上げるような“ジュース・B・クリプツ”といい、新体制での11月来日公演へ胸躍らずにいられない快盤。 (高橋智樹)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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バトルス ジュース・B・クリプツ - 『rockin'on』2019年11月号『rockin'on』2019年11月号
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