若気の至りを歴史に刻む

ミューズ『オリジン・オブ・ミューズ』
発売中
BOX SET
ミューズ オリジン・オブ・ミューズ

デビュー・アルバム『ショウビズ』の20周年を記念したデラックス・ボックス・セット。CD9枚組&アナログ4枚組という破格のボリュームがミューズらしいと言うか、ミューズがミューズらしさを炸裂させる前夜の一作、キャリアで唯一のマイナー作である『ショウビズ』(全英初登場29位)を20周年の今こそ自分たちの歴史上にがっつり正しく位置付けたいという意気込みを感じる企画盤だ。

本編のリマスター音源及びB面コレクションに加え、初期の未発表デモ音源や、999枚限定でリリースされた1998年のデビューEP、今回初音源化されたBBCライブ・セッション集など、『ショウビズ』前後の彼らのレアな音源がCD1からCD5にわたってぎっしり詰め込まれている。そう、実は本作で『ショウビズ』関連の音源は9枚中5枚で、残り4枚はセカンド・アルバム『オリジン・オブ・シンメトリー』関連の音源集となっている。そんなボックス後半の聴きどころは、彼らがヘッドライナーを務めた2011年のレディング・フェスティバルでの『オリジン・オブ・シンメトリー』10周年を記念したアルバム完全再現ライブがフル・バージョンで収録されたCD9だろう。2001年リリースのセカンド『オリジン・オブ・シンメトリー』は、ご存知の通りサウンド的にもバンド力学的にも現在のミューズの雛形となった作品で、『ショウビズ』が前夜だとすればまさに夜明けに該当する名盤だ。つまり本作は、ミューズが真にミューズとなったプロセス自体を貴重音源と共に克明に再検証できるボックスなのだ。

実際、こうして初期2作のレア・ワーク集を通して聴き比べてみると、ミューズにとっての20世紀と21世紀のギャップ、2枚のアルバムの間に走る大きな断層に改めて驚かずにはいられない。特に『ショウビズ』期のデモ音源にはまさに若気の至りが充満していて、『パブロ・ハニー』~『ザ・ベンズ』期のレディオヘッドを工夫なくそのまんまトレースしたかのようなデモを聴くと、当時の彼らがレディオヘッドのいちフォロワーとして不当に過小評価されていたのも、確かに仕方なかったのかも……と思ってしまう。同時に、USヘヴィ・ロックを耽美に転ばせた、後のゴス・エモにも通じるノイズ、ブリットポップ終焉後のUKギター・ロックの閉塞感を想起させるダークなメロディなどには、90年代末のミューズのサウンドが時代性を適宜反映したものだったことも再確認できる。そこから一転、時代からもトレンドからも遠く離れた唯一無二にして異形のエピック・ギター・ロックが突如鳴り響く後半のメタモルフォーゼの興奮を、ぜひ味わってみてください。(粉川しの)



詳細はWarner Music Japanの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ミューズ オリジン・オブ・ミューズ - 『rockin'on』2020年1月号『rockin'on』2020年1月号
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