やはりとんでもない才能の持ち主である。ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンの“個”としての出発点となるこの作品は、彼がヴァン・ヘイレンの二代目ベーシストに起用されたのが単なる縁故採用ではなかったことを改めて証明するのみならず、30歳の米国人ロック・ミュージシャンにとってのスタンダードというのがいかなるものであるかを伝えてくれる興味深い実例でもある。
作曲、演奏、歌唱のすべてをこなすその方法論には、いわゆる小器用さではなく、フー・ファイターズの始動時にまず自らの理想を独力で形にしようとした26年前のデイヴ・グロールにも重なる、意地と自己探求の姿勢を感じる。また、いくつかの楽曲にアリス・イン・チェインズからの影響が色濃くうかがえる事実も興味深い。
ひとつだけ残念なのは、エディが本作の完成を見届けられなかったことである。(増田勇一)
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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