地上波ドラマ『インビジブル』主題歌として書き下ろされた、メジャーデビュー25周年のアニバーサリーイヤーを飾る配信シングル。本稿執筆時点ではドラマの内容とリンクしているかはわからないが、バンドのこれまでとこれからの歩みをズバリ落とし込んだような楽曲となっており、このタイミングで出す曲としてはこのうえないのではないだろうか。聴き手を優しく包み込むように柔らかく始まったあと、徐々にビートを疾走させていった果てに至るアンセミックなサビで
Kjは《今のただこの瞬間が 僕らの変えられる全てなら》と歌う。その言葉の裏側に「もし過去を変えられるなら?」という願いを微かに覗かせて。それでも、《この夜を願い この夜だけを願い/塗り替えろ世界》と続けるのだ。振り返れば、
Dragon Ashほどシーンの内外に巨大な影響を与え、メンバーの加入と喪失を重ね、音楽性を拡げながら波乱万丈の物語を紡いできたバンドは他にないはず。そんな彼らが歌うのだ。《どう描いてもいいんだよ この世界線の今を進め/この世界線を行け》。だからこそ、別格の重みと温かみをもって、響く。(長瀬昇)
『ROCKIN'ON JAPAN』6月号より