夏が恋しくなる音

くるり『真夏日』
発売中
SINGLE
くるり 真夏日
「この曲の中に広がっているこの世界が好きだなあ」という感覚をあらゆる作品を通じて届けてくれるのがくるりだ。“真夏日”を聴くと、そういう魅力を再確認できる。夕暮れの帰り道で目にする風景、肌で感じる風、走る電車、蝉の鳴き声などの描写によって《夏の香り》のイメージを立体的に喚起してくれる歌詞が素晴らしいのはもちろんなのだが、歌、ギター、ベース、ドラム、ピアノによって構築されているサウンドの力が本当にとんでもない。有機物と無機物が発する無数の色彩、匂い、温度などに溢れている真夏の風景が、メロディ、ハーモニー、リズム、音の揺らぎ、音色が浮かべる表情によって豊かに描写されている。日常の中でふと湧き起こるささやかな幸福感は、もしかしたら音楽と相通ずるものが少なからずあるのかもしれない。五感を通して噛み締めた様々な感覚が胸の内で重なり合い、心地よい共鳴が生まれた時、我々は平凡な生活の中にもある幸福をふと感じるのではないだろうか? そんなことも考えさせてくれる“真夏日”に耳を傾けると、淡々と過ぎていく日々がとても愛おしく感じられる。(田中大)

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