昨年9月から4月にかけて敢行された超ロングツアー、その終盤戦のさいたまスーパーアリーナ公演を収めた映像作品。今回のツアーの軸になった『Editorial』の楽曲の多くは、超王道エンタメを志向した前作『Traveler』の楽曲とは大きくベクトルの異なる野心的なものだった。狂ったように破壊的な転調を繰り返す“Cry Baby”や、6分超えの超大作バラード“アポトーシス”がライブのハイライトを担ったことが象徴的なように、コロナ禍以降のヒゲダンは、世間から求められるものと4人が自由に表現したいものの狭間で試行錯誤を繰り返しながら、果敢に音楽的冒険を続けている。『Editorial』は過激でアバンギャルドな作品ではあるが、一方で今回のライブは、前作までのポップアンセムを惜しみなく織り交ぜることで、また華やかな映像演出や照明の力も相まって、総体として、観客を誰ひとり置き去りにしないポップなエンタメショーとして成立している。先鋭性と普遍性を高い次元で両立させることに成功した同ツアーは、これからも絶えず挑戦を続けていく彼らにとって、非常に大きな収穫の季節となったはずだ。(松本侃士)
大収穫の季節を経て快進撃は加速する
Official髭男dism『「Official髭男dism one-man tour 2021-2022 -Editorial-」@SAITAMA SUPER ARENA』
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