『ROCKIN'ON JAPAN』がお届けする最新邦楽プレイリストはこちら
変幻自在、憑依型など、レビューではよく使う言葉なのだが、それを本当に目の前で見せられると呆気にとられるのだと実感した。“逆光”“私は最強”では『ONE PIECE FILM RED』のキャラクターであるウタを降臨させ、“阿修羅ちゃん”“ダーリンダンス”ではボーカロイドの代弁者となり、“花火”“会いたくて”などでは日常と地続きのJ-POPシンガーに姿を変える。水槽を思わせる立方体のセットの中で飾られた人形のようなパフォーマンスを繰り広げた前半から、広いステージに解き放たれ、堂々と全身を使ってさいたまスーパーアリーナを支配した後半、イラストとシンクロした衣装を脱いでドレスを纏ったアンコールまで、Adoの変化を体感できる展開もお見事。さらに、涙ぐんだ声で夢のステージに立った感想を真摯に語るMCと、直後の“うっせぇわ”のシャウトのギャップには度肝を抜かれるはず。誰しもの中で偶像化しつつあったAdoが、「今を生きる表現者」として顕現するドキュメンタリーとしても秀逸な作品だ。(後藤寛子)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年8月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』8月号のご購入はこちら
他ラインナップはこちら