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11曲目“Begin Again”で佐々木想(Vo・G)は、その特別な歌声でこう歌っている――《勝ち続けてゆくんだ 言われっぱなしなら/僕はここで闘ってなどいない/待ち続けているんだ 堪らない瞬間を/ほら クヨクヨしてんなよ》。この曲の主人公は「勝つこと」を望みながら、「闘ってなどいない」という。むしろ「待つ」という受動性の中に、自らの生きる態度を見出している。この一見アンビバレントな感性に僕は強く惹かれる。この曲の主人公にとって「勝つ」ことは、くだらない競争原理の中にあることではないのだ。それは自分の人生の、いわば「運命」に対しての問題なのであって、だから、この曲の中で「勝ち」を望むことと「待つ」ことは矛盾していようがしていまいが関係なく、共にある。1stフルアルバム。ここに収録された14曲すべてに触れたときに初めて、私たちはシャイトープというバンドの全貌を、その力強さも儚さも含めて、本当の意味で知ることになる。《何も無い退屈な世界》を突き刺す、革命の一作。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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