これまでよりも格段に大きなスケールで世界を捉えるようになり、それを前進と上昇にのみスパイラルするエネルギーへと転化することに成功したセカンドアルバム。大きく演奏やサウンドのスタイルを変えたわけではないが、大人として経験と苦渋の味を知り、なおかつ貪欲に新たな世界を知ろうとするエネルギーが迸っている「24歳」という年齢に全員がいることがこのアルバムには大きく影響していると思う。メロディの青さと深み、グルーヴの勢いとタメ、歌詞の文学性とエモーション、サウンドの透明感とカオス感、それぞれの相反する要素が絶妙のポイントで折り合っている。もともと彼らはバンドとして全ての要素の均整が取れた肉体を鍛え上げて、シーンの王道で勝負していくタイプだが、今のNICOは本当に絶妙のバランスで成り立っていると言えるだろう。タイアップにも前向きに取り組んでいるが、割り切るのでもなく、流れに呑み込まれるのでもなく、それを自分たちのバンドとしてのポテンシャルを試し、ステージを上げいくための健全なトライアルにしている。彼らのようなバンドが成功する音楽シーンであってほしい。(古河晋)