それでも、知り合いの結婚式のために書いたハッピーな歌であるはずの“wedding song”を聴いて、思わず胸が一杯になってしまう。志村の飾らない言葉と、ラフなデモ録りだからこそのピッチが狂った歌声が愛おしくてしかたがない。こんな歌をもっともっと歌ってほしかった。フジファブリックの新作を聴くだけなら思わなくてもいいはずのそんなことを、やはり思ってしまう。
ラスト曲“眠れぬ夜”は素晴らしい。この曲を歌えたこと、この曲を完成させることができたこと、4人ともが何か大きなものが満たされたに違いないと思う。メンバーはこのアルバムはフジファブリックの最高傑作だと言っている。僕もそう思う。とぼけた顔でやって来て、鳥肌が立つようなメロディを歌ってこの灰色の国に虹をかけるようなフジファブリックの、これは紛れもなく最高傑作だ。(山崎洋一郎)