好きだけど、愛しにくくて複雑

ウェーヴス『キング・オブ・ザ・ビーチ』
2010年12月08日発売
ALBUM
ウェーヴス キング・オブ・ザ・ビーチ
ここ2~3年で、USインディ・トレンドのひとつとしてじわじわ人気を広げてきたサーフ・ロック。80S英ジャングリー/シューゲイザー(ヴァセリンズ、ジーザス・アンド・メリー・チェイン等)を掘っていたキッズが、そのネタ元であるウォール・オブ・サウンド=フィル・スペクターやビーチ・ボーイズまで遡った結果、だろうか。音楽美学として愛されている側面がまずありきとはいえ、20代前半のDIYバンドが多い「若い」ムーヴメントな点を考えるに、テク不足をカバーすべくリバーブやフィードバックが多用される傾向も、この症候群に拍車をかけている気がする。

そんな「今が旬」な界隈の象徴的存在のひとりと目されるのが、サンディエゴ発のひとりパンク君:ネイサン・ウィリアムスことウェーヴス。「スケボーとハッパに目がない少年系ルックスのスラッカー」というキャラも手伝い、一部にはベックと比較する声も上がる人だ。安機材で作った宅録ならでは!な、どこまでもスキゾにぶっ壊れたノイズ・ポップが抜群だった前2作を経て、本サードはバンドを伴い、プロデューサーまで迎えての進化作。キレのいいビートにクリア・カットな音……と、一聴「これ、同じバンド?」と感じるほどである。音楽的に成長し、新レベルを目指すのは悪いことではない。軽妙なポップ・パンクとして、何も考えず盛り上がれる曲も入っている。しかし、ニートに整えられた本作のプロダクションは、咀嚼しやすいパッケージにまとまらない=予測不可能なところが面白かったウェーヴスからカドを取り、「カリフォルニア・パンクの傍流」に押し込む結果になっている。その意味で、ちと残念な1枚であります。(坂本麻里子)
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