ロック最強の仮想敵

ドレイク『テイク・ケア』
2011年11月30日発売
ALBUM
ドレイク テイク・ケア
そのチャート・アクションや売上枚数で本作が語られる機会は多いのだろう。前作で画期的な成功を収めたヒップホップ界のニュー・スターの赤裸々かつ野心的なプライヴェート・ダイアリーと見ることもできる。けれど、本作をここまで素晴らしい作品にしているのは、何と言っても音だ。アルバム・タイトル曲においてジェイミーXXをわざわざ召喚し、その上でリアーナとのデュエットを展開してしまうのが象徴的だが、いわゆるヒップホップ村をいとも簡単に飛び越えて、本作のサウンドは展開している。前作に引き続き、ダブステップはもちろん、内省的なエレクトロニカのトーンまで採り入れたトラックは徹底的に洗練され、ラップと歌を自在に乗りこなすドレイク自身のヴォーカルは冴え渡り、今を考えるとこれしかないという最強のゲスト陣が花を添える。そのワイルドカード的な佇まいは、商業性の裏返しでもあるが、まったく躊躇せずにすべてを手に入れようとするこの才能は見ていて、むしろ清々しいくらい。逆に言えば、ロックがチャートを転覆させるためには、これに勝たなきゃいけないということ。そんなことまで考えさせる。(古川琢也)
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