彼が戻ってきた

ジェームス・イハ『ルック・トゥ・ザ・スカイ』
2012年03月14日発売
ALBUM
ジェームス・イハ ルック・トゥ・ザ・スカイ
 もう14年だという。彼がソロ・アルバムに取り組んでいるという話は随分前から聞いていた。最終的にこうして日の目を見るまでは、そこから更に数年の歳月を要した。けれど、そんなことは何も問題じゃない。むしろ敢えてレコード契約などを結ばず、時の流れや世俗のしがらみから離れたところで、一つ一つ丁寧に見つめながら本作は形になっていったのだろう。その事実に深い感慨を覚える。ジェームス・イハの14年ぶりのセカンド・アルバム『ルック・トゥ・ザ・スカイ』が素晴らしい。
 アルバムの1曲目“メイク・ビリーヴ”を聴いた瞬間、14年前に初めて彼のファースト・アルバムを聴いた時のことを思い出す。ジェームス・イハという人の鳴らす音楽は長い年月を経てもまったくブレていない。ファーストは言うまでもない名盤だが、当時スマパンのイメージとは一線を画す、あたたかな音像に驚いた人も多かったようだ。でも、僕はこれはスマッシング・パンプキンズだと思った。もちろんイハとビリー・コーガンという人はだいぶタイプも違う。けれど、まどろみのなかで迎えたやわらかな夜明けのような音に、スマパンが鳴らした「夢」を見ていた。そして、彼は14年経った今もその夢を手放そうとしていない。
 カレンO、トム・ヴァーライン、FOWのアダム、カーディガンズのニーナ・パーションをはじめアントニー&ザ・ジョンソンズのストリングス隊に、ベイルートやカーディナルズのメンバーなど、多くのゲストが参加してるが、それも自然なやりとりの中で実現したものだという。こうしたレコードがリリースされること自体に喜びを感じる。(古川琢也)
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