やっぱアメリカの国宝である

ザ・ビーチ・ボーイズ『ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ』
2012年06月04日発売
ALBUM
ザ・ビーチ・ボーイズ ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ
まず断っておくが、この作品は『ペット・サウンズ』ではない。ブライアン・ウィルソンがバンドに復活し、彼が参加したアルバムとしては『スティル・クルージン』以来、23年ぶりとなる本作。とはいえ、あの作品にブライアンによる楽曲が収録されているが、参加していたとは言いがたい。つまり、これだけブライアンがコミットしたビーチ・ボーイズの作品は本当に久しぶりなわけで、そこで安易に期待しがちなのは、ロック史上に静かに輝く名作中の名作『ペット・サウンズ』なわけだ。だが、もちろん、それは間違っている。他のメンバーを除外し、狂気すれすれの執念と情熱に燃えるスタジオの鬼と化したブライアン・ウィルソンがここにいるわけはない。あくまでグループの一員として復活したブライアンとバンドとのハーモニーは、まさに西海岸の太陽とビーチの申し子であるビーチ・ボーイズならではのレイドバックしたアルバムのムードから伝わってくる。そういう意味では、ブライアンが他のメンバーに主導権を譲った『ワイルド・ハニー』やマイク・ラヴ色が濃く出てきた『フレンズ』に近いのかもしれない。あくまでムードは。マイク・ラヴも大活躍しているし。

楽曲に関して言うと確実にそれらの作品の上を行っている。バンドの十八番の神懸りのハーモニーをふんだんに活かしながら、ブライアンが復活したことを強く感じさせるセンチメンタリズムに包まれたタイトル・トラックなんかは、ブライアンがこれまでの最高傑作と称えるのが100%理解できるほどの逸品。50周年にして、またもや名作と呼べる作品を作ってしまったのだ。(内田亮)
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