街角で再会
ジ・エナミー『ストリーツ・イン・ザ・スカイ』
2012年06月20日発売
2012年06月20日発売
ALBUM
ヘッドラインのザ・ヴューの記事にも書いたけれど、奇しくもこのジ・エナミーの新作もまたザ・ヴューの新作同様に彼ら自身の原風景、青春への回帰が行われている。同時代の英国で同じく10代でデビューした彼らが、同時に自分の足元を見つめ直す作品を作ったのは興味深い(両バンド共に移籍先がクッキング・ヴァイナルってのも面白い偶然)けれど、エナミーの場合はワンセンテンスで曲の主題をすぱっと表現しきる清廉直球なパンク・ソングに回帰したサウンド面に加えて、歌詞面での回帰もヴィヴィッドだ。「俺はこの街で生まれてここで死んでいくんだ」と宣言し、21世紀のザ・ジャムと謳われたデビュー作から、「万人のための音楽」を標榜し、U2ばりのスタジアム・ロック・アイデンティティを目指したセカンドへと歌の主体を大きく変貌させた彼らが、本作では再び自らが主役となり、街角に立ち、行きかう人々を観察する少年のリアルな目線を取り戻している。「この退屈な街が嫌なら抜け出せばいいさ、土曜になればきっと全て上手くいくから」と歌う“サタデー”を聴いて、「これぞジ・エナミー!」と快哉を叫ぶファンもきっと多いはずだ。(粉川しの)