あらゆる角度から「問題作」と呼びうる一枚である。ただし、そもそもミューズというバンドは問題作を積み重ねることで唯一無二のステージに上り詰めた存在なので、彼らが問題作を作ること自体には別に驚きはない。本作の驚きの源とは、「問題作」の「問題」の位相がこれまでとは全く異なっているということなのだ。端的に言えば、この『ザ・セカンド・ロウ』においてギター・ロックのカタルシスは意図的に排除されている。これまでのミューズの作品が問題作たる所以がギター・ロックのカタルシス&ドラマツルギーをたった独りでとんでもない次元まで引き上げていった点にこそあったことを思えば、本作の「問題」が実にとんでもないチャレンジだと理解いただけるはずだ。そして本作が画期的なのは、ミューズのカタルシス&ドラマツルギーとは既にギター無くしても十分に構築可能な法則であると証明してしまったことだ。ファンクにディスコ、クイーンばりの破天荒クラシックもあれば90年代初頭のU2風なセクシャルなエレクトロ・ロックもある。レディオヘッド的マナーでギターを「ギターらしい」役割から解放するアヴァンギャルドなナンバーもある。その全てが大胆かつスリリング、ミューズを聴く時のあの興奮が完璧に再現される。惜しむらくはクリス作の後半2曲が他と比べて明らかに普通すぎるため、アルバム全体の熱量が貫徹されていない点か。もし、この2曲が無かったら最強の新生ミューズの船出になった作品だと思う。いずれにしても彼らは本作を一体ライヴでいかに再現するつもりなのか。ミューズの途方もないトライアルは続く。(粉川しの)