チャート1位を獲った『still a Sigure virgin?』以来となる新曲リリース、TKのソロ作を経てのカムバックで、しかも初のアニメ主題歌。というわけでこのシングルに対する期待値と注目度は、言うまでもなくこれまでのどの作品よりも高い。そこに投げ込む1球として、この“abnormalize”はパーフェクトである。アニメ『PSYCHO-PASS』の物語とシンクロすることで時雨の世界観をストレートに提示し、音楽的にも彼ららしさが存分に表現されていながら、楽曲そのものはぎゅっとコンパクトにまとめられている。ツアーで先行して披露されていた“make up syndrome”と合わせ、楽曲構造の多層性から音色の尖り方、演奏の破壊力まで、わずか2曲で凛として時雨とは何なのかを言い切ってしまっているようなすさまじいシングルだ。「アブノーマライズ」という言葉は「標準や基準からはみ出す、外れる」という意味合いだ。ロックやポップミュージックのスタンダードからはみ出し続けることで唯一無二の存在となった凛として時雨。どこまでもアブノーマルなバンドによる、新たな「基準点」がこれだ。(小川智宏)