ライブでやってほしい曲、聴きたい曲が、今のプライマルのあの最高のグルーヴでもって、次から次へとプレイされる。あがらないわけがない。しかもこれ、いつも感心するんだけど、ほんとにいい出音。気持ちいいことこの上なし。洋楽のバンドのライブを観て、「音いいなあ、なんで日本はこれが出ないんだろうなあ」と思うことが時々あるが、まさにそれ。きれいで各楽器の分離がはっきりした音ではなく、なんというか、スピーカーに火薬入ってんじゃないかみたいなゴーンとした、ドーンとした、マグマみたいな音なのだ。
ボビー・ギレスピーも、とても調子がいい。なんというか、ステージにいる時の存在のしかたが軽やかな感じ。私の中で、長らく「現存するもっとも死にそうで死なない男」でしたが、最近「結局死なない男」へと昇格した気がします。なんだ昇格って。
にしても。さっき「いいじゃんそんなの、最高のロックンロール・バンドなんだから」って書いたけど、そう書いて「あり」なバンドに、いつの間にかなったんだなあと思う。
例えば『スクリーマデリカ』の頃だったら、「ええっ? 何言ってんの?」って話だし、『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ』の頃だったら、「いや、確かにそういう音だけど、そんな肯定のしかたでいいの?」って感じだし、『エクスターミネーター』の頃だったら、「いやいやいや!」ってたちどころに否定されるだろう。ってことは、2006年の8thアルバム『ライオット・シティ・ブルース』ぐらいからそうなったのか。でも、今日もプレイされた初期の名曲“ムーヴィン・オン・アップ”を聴きながら、「これ、超王道のロックンロール・チューンだよなあ」と改めて思ったりもした。
とにかく、なんだかすごく気分のいい一夜でした。僕にとって、バンドのありかたや、音楽性や、その他いろいろについて、いちいち考えたり位置づけたりしなくていい、ただ存在してくれることを気分よく楽しめるバンドになったってことです、今のプライマルは。(兵庫慎司)