冒頭の“CHINESE BLUES”でこそサウンドにいささかの不整合感が感じられたりもしたが、2曲目“J SMITH”で早くもメンバー間の波長をばっちりチューニング。続く“SELFISH JEAN”でフォーラムの空気をチアフルにアップリフトさせれば、「いち、にぃ、さん、しぃ!」と日本語での4カウントから始まった“WRITING TO REACH YOU”で、盛大なシンガロングと共に今宵最初のクライマックスへ!と、序盤からフォーラムを完全に虜にしてしまったトラヴィス。7曲目「LONG WAY DOWN」では、フランがハンド・マイクでひょいとフロアに飛び降りるというサプライジングな展開も。突然の出来事に慌てふためくお客さんを、フランはやさしく微笑みかけながら一人ひとりと握手したりハイ・ファイヴしたりして、親密にコミュニケート。客席に乗り上げて、四方をオーディエンスに囲まれながら歌うその姿にフォーラム中が釘付けとなった。
「ついに帰ってきたよ。10年ぶりだって? はるばる歩いてきたからさ。いや、飛行機のチケット代を貯めてたんだよ(笑)」と、ひと息ついてフラン。MCでも場内を和ませ、続く“CLOSER”では、フランの呼びかけでセカンド・ヴァースをみんなシンガロング。「ビューティフル・シンギング! ファンタスティック!!」と、フランも上機嫌だ。
思い返してみても、初めてかもしれない。こんなにハート・ウォーミングで、居心地のいいライブ会場は。もちろんフォーラムの椅子がフカフカだったって話ではなく(当たり前ですが……)、自分自身がたしかにこの場に受容されている感覚のようなものがあって、それは言うまでもなく、トラヴィスというバンドの持つヒューマンな魅力から派生する磁場によるものだ。ホント、つくづく貴重なバンドだと思う。
サプライズはアンコールでも待ち受けていて、まず“RING OUT THE BELL”ではフランがベースを、そしてダギー(B)がアコギを持ってメイン・ボーカルを披露! さらに、唐突にフランがこんな提案をするのだった。「この素晴らしい建物は音の反響もすごくいいから、次の曲は完全にオフ・マイクでやってみたいんだ」と。そしてアコギを抱えたフランを中心にメンバーがステージ前方に集って、静まりかえるオーディエンスに向けて「FLOWERS IN THE WINDOW」を生演奏。完全なアンプラグドながら、その歌声はしっかりと会場の隅々にまで響き渡り、フォーラムはまるでみんなでひとつのキャンプ・ファイヤーを囲んでいるような雰囲気に。親密で、温かい、至福のひと時だった。
ラストは、昨年のフジ・ロックでも小雨降りしきる絶妙なタイミングでプレイされた「WHY DOES IT ALWAYS RAIN ON ME?」を。最後のヴァースで「みんなでポゴをやろう!」とフラン。そしてリズムに合わせて誰しもが身体を弾ませ、この上なくピースフルなムードのもとトラヴィス10年ぶりの単独公演は幕を閉じたのだった。「次は10年もかからないよう、近いうちにまた日本に来るよ。9年と半年くらいで(笑)。シー・ユー・スーン!」。その言葉を信じて、心待ちにしたいと思う。また無邪気な笑顔で、みんなで歌いあえる日が来ることを。(奥村明裕)
1.CHINESE BLUES
2.J SMITH
3.SELFISH JEAN
4.WRITING TO REACH YOU
5.RE-OFFENDER
6.SOMETHING ANYTHING
7.LONG WAY DOWN
8.LOVE WILL COME THROUGH
9.CLOSER
10.SIDE
11.DRIFTWOOD
12.FALLING DOWN
13.SING
14.MY EYES
15.BEAUTIFUL OCCUPATION
16.BEFORE YOU WERE YOUNG
17.TURN
アンコール
18.RING OUT THE BELL
19.FLOWERS IN THE WINDOW
20.WHY DOES IT ALWAYS RAIN ON ME?