●セットリスト
01.Starrrrrrr (Bedroom ver.)
02.Run Away (Bedroom ver.)
03.Leaving Grapefruits(Bedroom ver.)
04.Thunder (Bedroom ver.)
05.月色ホライズン (Bedroom ver.)
06.Adventure (Bedroom ver.)
07.rooftop(新曲)
08.Oblivion
09.Burger Queen
10.For Freedom
11.Dracula La
12.Waitress, Waitress!
13.Mosquito Bite
14.city
15.Kick&Spin
(アンコール)
EN1.PARTY IS OVER
EN2.Starrrrrrr
完全リモートで制作されたコンセプトアルバム『Bedroom Joule』のリリースに合わせ、2デイズ(2日目となる6月21日はファンクラブ/モバイル会員限定)で開催されることとなった[Alexandros]の無観客生配信ライブ「Party in ur Bedroom」。ライブ自体が久しぶりであるというのはもちろんだが、過去の楽曲を大胆にリメイクした『Bedroom Joule』の世界観がライブでどのように表現されるのかという意味でも楽しみにしていた。
キャンドルの灯りがともり、カーペットが敷き詰められたステージに時間通りにメンバーが登場し、椅子に座ってライブはスタート。川上洋平(Vo・G)がギターを爪弾き歌い出したのは“Starrrrrrr (Bedroom ver.)”。キーを下げたことでまるで耳元でささやくような親密さを手にしたあのメロディが素朴な響きを持って聞こえてくる。そこに温かなビートとベースライン、そしてサポートメンバーのROSEが弾くキーボードの音色が絡み合う。続けて2曲目“Run Away (Bedroom ver.)へ。ミニマルなリズムトラックに乗って、立ち上がった川上が気持ちよさそうに身体を揺らす。磯部寛之(B・Cho)のコーラスがその歌を支え、アンサンブルは徐々に熱を帯びていく。正直、もっとこじんまりとしたライブになるのかなとイメージしていたのだが、全然そんなことない。画面に映っているのは、今日も思いっきりダイナミックでエキサイティングな[Alexandros]だ。
「ライブ自体が約半年ぶりなんですよ。半年ぶりなのに緊張感があるなかで始まってますけれども」と言いながら、川上はリラックスした表情。Twitterや配信と同時に見ることができるチャットへのファンの書き込みを読み上げて、オンラインだけれども確かにオーディエンスとつながっていることを確かめる。川上自身によるコーラスを重ねた“Leaving Grapefruits (Bedroom ver.)”では配信だからこそ際立つボーカルのレイヤーの奥行きを、白井眞輝(G)によるしっとりとしたアルペジオから始まった“月色ホライズン (Bedroom ver.)”ではオーガニックでどこまでも優しい響きとともに《今をただ生きていく》という今にもドンピシャなメッセージを。このアレンジ、この形だからこそ伝えられる思いと[Alexandros]の魅力が、物理的距離を超えてこれでもかと伝わってくる。
「この騒動がちょっと前だったら、友達とか恋人とか家族とか、身近に感じられなかったかもしれない。いろいろなツールがあってよかったなと思う。でも我々はライブバンドなんで、そこは諦められない。その日まで、楽しめるように我々もやっていきます」と、思うようにライブができない現状への思いを語る川上。そんな思いを象徴するように鳴らされたのがアルバム最後の曲“rooftop”だ。「また会える」という希望をストレートに歌った歌詞、そしてアコースティックな手触りではあるがこちらもストレートなバンドアレンジ。目をつむってコーラスを歌う磯部、少しうつむき加減で黙々とギターを掻き鳴らす白井、そして歌い終えてバンドを見回して笑顔を見せた川上。その表情には確かな手応えと希望が宿っているようにみえた。
そしてその手応えと希望は、ここからさらに爆発していく。「後半戦、いけますか!」という川上のシャウトから流れ込んだのは“Oblivion”。それまでの落ち着いた雰囲気から一転、キレのあるロックサウンドが炸裂する。パワフルに鳴らされるサポートメンバー・リアド偉武のドラム、疾走するギターリフ。立て続けに演奏された“Burger Queen”では川上のジャズマスターがうなりをあげ、白井はウィンドミルで興奮を露わにする。さんざん書いておいて何だが、やっぱりこれ、である。
いつもより小さなステージで鳴らす分ぎゅっと密度が高まったような“For Freedom”、「オンラインだからってシンガロングさせないと思うなよ! 近所迷惑になってもお母さんに怒られても知らねえぞ!」というドSな煽りとともに突入した“Dracula La”。そして“Waitress, Waitress!”の怒涛のようなアンサンブルを経て、メタリックなリフワークが光る“Mosquito Bite”へ。どっしりとしたグルーヴが収録現場のサイズとは不釣り合いなほどにでかいスケールで広がるなか、「オーオオー」という磯部と白井のコーラスが轟く。ラストは彼らの必殺ロックアンセム“Kick&Spin”。川上は何度もカメラにマイクを向けて「歌え」とけしかける。どこまでも上がっていくテンションが爆発した瞬間、「またお会いしましょう!」と彼らは去っていった。
その後楽屋でリラックスした表情を見せていたメンバー(そこまで映像で観ることができるのもオンラインならではだ)だが、止まないアンコールの声に応えて再びステージにカムバック。ゆったりとしたリズムで奏で始めた“PARTY IS OVER”の間奏でコメントを読み上げ再びファンとの絆を確かめると、今日1曲目にやった“Starrrrrrr”を今度はオリジナルのアレンジで披露。ライブの最初と最後がつながって、まるでライブバンドとしての[Alexandros]が不死鳥のように蘇るのを観ているような気分になった……というのはちょっと大げさかもしれないが、川上の「我々はライブバンドなんで諦められない」という言葉を自ら証明するようなフィナーレは、どこまでも頼もしく、力強かった。
『Bedroom Joule』はこの状況がなければ生まれなかったアルバムだし、ライブとは違う分かち合い方を目指した作品だ。しかしそれを配信とはいえこうしてライブの場に解き放ち、しかもストロングスタイルのライブと掛け合わせてみせた今回の試み。それ自体が、彼らからのメッセージだったのだと、配信を終えた画面を見つめながら改めて実感した。(小川智宏)
6月30日(火)発売の『ROCKIN'ON JAPAN』8月号に[Alexandros]のZoomインタビューが掲載!