millennium parade/東京国際フォーラム ホールA

millennium parade/東京国際フォーラム ホールA - All Photo by Kosuke ItoAll Photo by Kosuke Ito

●セットリスト
01.Bon Dance
02.SNIP
03.Veil
04.WWW
05.Stay!!!
06.NEHAN
07.Dark
08.Fireworks and Flying Sparks
09.Slumberland -millennium parade ver-
10.ABUKU -millennium parade ver-
11.Plankton
12.lost and found
13.Call me
14.2992
15.Fly with me


  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
millennium paradeが東京国際フォーラム ホールAで行った、約1年ぶりとなるワンマンライブ。巨大な会場を活かした音のスケール感、そして大型スクリーンに映し出された3D映像の迫力が観客を圧倒するなか、オープニングムービーで「ショーのあいだは全てを忘れられる」と語られていたとおり、音と映像の世界にどっぷりと没入するような時間が生み出された。近未来的でサイバーな世界観をくっきりと描き出しながらも、ステージで鳴っている生の音とメンバーの躍動からは、「今」に向けたmillennium paradeのメッセージが鮮やかに伝わってくる、そんなライブだった。

  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
落ちぶれたピエロに“Fly with me”の主人公Eugene(ゆーじーん)から電話がかかってくる……というムービーからショーは始まる。「クソみたいなウィルス」によって変貌した世界から「ブッ飛ぶ」ために、ピエロはSDカード(“Fly with me”のミュージックビデオに登場していたアレだ)を呑み込む。すると画面にはmillennium paradeの作品のアートワークが次々と映し出され、ピエロと僕たちを別世界へと連れていくのだ。いつの間にかステージには常田大希をはじめバンドメンバーが集結。ermhoi、新井和輝、勢喜遊、江﨑文武、石若駿、MELRAW、そしてラップやアジテーションを担当するPERIMETRONのメンバー佐々木集、Mori Cota。ステージ中央の、まるでコックピットのようなブースにいる常田を取り巻くようにファミリーツリーの構成要員が大集合だ。そしてermhoiが「イェー!」と叫ぶと、“Bon Dance”からライブはスタート。スクリーンでは鬼のお面を被った赤ちゃんがノリノリで踊っている。アニメーションに乗せて届けられた“SNIP”では佐々木とMoriがマイクを持ってステージの前方に来て観客を煽る。常田もおなじみの拡声器で声を張り上げている。

millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
続く“Veil”ではMVの映像を背にermhoiが歌声を響かせる。もう何度も何度も聴いた曲だが、リズムの生々しさとダイナミックさによって、まるで別の曲に生まれ変わったようだ。ラップと同期するように口を動かす青い肌の天使(なんだと思う、頭の上に光輪があったので)の姿が強烈な印象を残すなか、ドープなリズムと高らかなファンファーレ(勢喜がそれに合わせてステージ上をマーチしている)“WWW”、そしておなじみ犬と飼い主の仁義なき戦いを描いたMVが流れた“Stay!!!“、砂嵐のような映像と不穏なオーケストレーション、そして石若と勢喜のツインドラムが鳴らす激しいビートがシンクロして観る者の心をざわつかせた“NEHAN”。1曲ごとにテイストの異なる映像が繰り出され、楽器隊6人で生み出すグルーヴも変幻自在にトランスフォームしていく。さっき“Veil”のところで「別の曲に生まれ変わったようだ」と書いたが、それはあの曲に限ったことではない。どの曲も、映像と音の交わりによってまさに生き物のように形を変え続ける。アダムとイヴのようなイメージを伝える映像がどこか神聖な雰囲気を醸し出した“Dark”から、常田がボーカルを取って“Fireworks and Flying Sparks”へ。ここまで一切休みなし。次々とつながっていくテンションの高い演奏がオーディエンスを圧倒し続けている。

millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
ここでermhoiが客席に語りかける。「みなさん、立って踊りましょう!」。その声に待ってましたとばかりにオーディエンスは総立ちに。そして鳴らされたのはKing Gnuでもおなじみ“Slumberland”のmillennium paradeバージョンだ。MELRAWのサックスがテンション高く鳴り響くなか、拡声器を持った常田が観客を煽るようにステージを練り歩く。スクリーンから浮かび上がっているのは、King Gnuの“飛行艇”MVのあの少年が、ボロボロの旗を掲げて仁王立ちしている姿だ。

millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
ここからが個人的なハイライトだった。ぶくぶくと沸き立つ泡、そして生命の歴史をたどるような映像が3Dで迫ってくる“ABUKU”(Srv.Vinciの楽曲であり、King Gnuの新曲“泡”の原曲でもある)を経て、まさに生命そのものを歌った“Plankton”へ(MVの動物たちが3Dでいきいきとうごめいている)……という憎い演出を経て、静かなピアノの音色から“lost and found”へ。子宮のエコー映像が流れ、前の2曲とつながるテーマを感じさせる。血管のなかを流れる赤血球や白血球のように、細い管のなかを赤白のカプセルとだるまが流れてくる。命という根源的なテーマに真正面から向き合うようなこの映像の展開は見事だった。あまりにも肉体的なバンドの演奏とあいまって、今ここで音楽が鳴っているということ自体が大きな意味合いを帯びて伝わってくる。もちろんそのテーマやメッセージが明確に言語化されることはないが、それは“Veil”以降、millennium paradeが角度を変えながら描き続けていることでもある。このご時世、1日2回公演を実施してまでライブを開催したのはなぜか。そこにある「意思」をまざまざと見せつけるようなパフォーマンスは文字通り圧巻だった。

millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
さあ、そろそろライブも終盤に向かっている。スタッフやクルー、バンドメンバーのクレジットをスタイリッシュに映し出しつつ怒涛のアンサンブルが繰り広げられ、客席から喝采を浴びた“Call me”から、年明けから放送されるNHKスペシャル『2030 未来への分岐点』のテーマ音楽として書き下ろされた“2992”へ。新井の弾く太いベースラインとermhoiのハイトーンボーカルがオーディエンスを漆黒の未来へと引き込んでいくような、力強くてドラマティックな楽曲だ。キーボードのシンフォニックな音色がとても美しい。そしてラストは“Fly with me”。力強いビートに合わせて身体を揺らしながら、再びパーティーは絶頂へと駆け上っていく。一心不乱に腕を振る観客とステージが一体となるなか、常田のシャウトが轟いてフィニッシュ。最後にはオープニングと同じくピエロのエンディングムービーが流れる。「今日は希望を土産に持って帰ってくれ」というメッセージ、そして「See you soon」という文字。終わった瞬間、客席からは大きな大きな拍手が巻き起こった。

millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
そのエンディングの映像が実に具体的でポジティブな温度を持っていたことに正直驚いたのだが、この日のライブは間違いなく、この混沌とした時代に生きる僕たちへの、millennium paradeからの頼もしいメッセージだった。MCで何かを語ったりすることはもちろんないが、そのかわりに、音楽と映像がすべてを物語っていた。退廃的で終末的な未来の世界を生き抜く楽曲の主人公たちがそうであるように、ブッ飛んで生きていこうぜ。生命力に満ち溢れた音と3Dで目のなかに飛び込んでくるような映像の数々は、そんなふうに言っているように思えた。(小川智宏)



  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA
  • millennium parade/東京国際フォーラム ホールA

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする