●セットリスト
01. 壁の一週間
02. 世界は変えなくていい
03. アイスグリーン
04. SSRI
05. Bang Bang (My Baby Shot Me Down)(カバー)
06. The End of the World(カバー)
07. 新月とコヨーテ
08. Creep(レディオヘッドカバー)
09. 朝日のあたる家(アニマルズカバー)
10. 瓶とスコール
(アンコール)
11. フーチー・クーチー・マン(マディ・ウォーターズカバー)
12. Boom Boom(ドクター・フィールグッドカバー)
13. ハイエナ
『CUT』主催によるイベント「CUT NIGHT」Vol.12が4月10日、開催を迎えた。会場をステージに巨大なLEDが設置された未来型のライブスペース・池袋harevutaiに拡大して2回目の開催。チケットは先行で売切となり、会場には熱気が溢れていた。
『CUT』編集長・渋谷陽一によるトークのテーマは「ロックの今と昔」。ロックの何がそもそも画期的で、なぜそれが停滞し、そして今、どのようにロック本来の力を取り戻しているかを明解に解き明かす、壮大かつエンターテインメントなトークライブとなった。
そしてlukiによる恒例のライブ。幻想的なSEと真っ青な照明の中、白の衣装で登場し、荒涼とした風景を描くように奏でられたのは“壁の一週間”。そして2013年のミニアルバム『パープル』から“世界は変えなくていい”と意外な選曲からスタートする。しかしスクリーンに映し出される鮮烈な言葉と、強い眼差しで凛と立って歌うその姿から、彼女が今、この世界で起きている目を覆うような出来事に対し、音楽でプロテストする気持ちを持ってステージに立っていることが伝わってくる。そして“アイスグリーン”では巨大LEDをふんだんに使った映像演出で一気にその歌世界に没入させ、間髪入れず最新曲“SSRI”を深く刺す。音、言葉、映像の完璧な融和がそこにあった。
そして、この日は中盤からカバー次々と披露。“Bang Bang(My Baby Shot Me Down)”は、クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビル Vol.1』の冒頭場面で使われたのも懐かしいナンシー・シナトラのバージョンを想起させるアレンジ。これまで様々なアーティストがカバーしてきた名曲を絶妙の訳詞で見事に自分のものに。
そして、もう1曲の新カバーも数多くのアーティストが歌ってきたスタンダードナンバー”The End of the World”。あまりにも深い喪失の果てにある風景に放り込まれながら、冒頭の“壁の一週間”“世界は変えなくていい”と地続きのメッセージと物語性を感じている自分がいた。
その後も映像との融和で美しく飛翔力を増した“新月とコヨーテ”“瓶とスコール”とオリジナルを挟みながら、カバー曲をアンコール含めて4曲披露。そのオリジナルとカバーの相互作用でグングン会場の温度は上がっていく。MCでlukiも語っていたが、お客さんと向き合いカバーに挑戦することで、不思議とlukiの音楽性は広がると同時にオリジナリティを濃くしている。
アンコールラストは最早ライブの定番曲“ハイエナ”だったが、この日の“ハイエナ”の破壊力は最強のポップ・ミュージックとしてのロックの本質をライブで掴んだ、自信に満ちたロック・アーティストlukiの“ハイエナ”に他ならなかった。(古河晋)