19:33、不穏なSEの中、4人が静かに登場。そして爆発する、冷徹で熱いギター・サウンド! 黒の長袖シャツのボタンをきっちり上までとめた小林祐介(Vo/G)の歌声は、ダルでメロウな媚薬感を漂わせながら、曲のクライマックスでは他のどんな「スクリーム」とも「絶唱」とも違う悲鳴のような絶叫を聴かせる。時にアルペジオで絡み合い、時に不協和音ぎりぎりの領域でぶつかり合う小林祐介&ケンゴマツモトのギター。そんなアンサンブルにロックのダイナミクスを与えながら、聴く者を背徳の淵へ追いやっていく高松浩史(B)と吉木諒祐(Dr)のリズム……それこそ「ポップ」とか「キャッチー」とかいう言葉を忘れてしまったかのような張り詰めたサウンドが、クアトロを一気に支配する。そんなアクトを凝視しているオーディエンスは、曲が終わるごとに、何かの術がとけたかのようにはっと我に返って熱い拍手を送っている。
たとえば、冒頭で歌い上げた“philia”の、仲睦まじい2人の風景によぎる《これから全ての出来事を忘れにいくけど 生まれ変わりはしないかもしれない》という刹那感。たとえば、小林がアコギを抱えて披露した“mer”の、《君が吐き出したものを僕は食べたい どうして僕は届かないんだろう》という切実にねじれた心のかたち。そしてたとえば、清冽な轟音越しに助けを求めるかのように《ありきたりな狂気の話は いつも僕を歪める》と歌う“para”。楽園のような甘美なイメージの直後に奈落の底に叩き落とすような、衝撃的瞬間の連続のような音楽体験だ。
「ツアーの間、この作品のことをずっと考えてて……今日のことを、ずっと考えてた気がします。この瞬間に立ち会ってくれて、ありがとう」と小林は言った。あふれんばかりの歓喜の共有でも、熱きエモーションの炸裂でもなく、狂おしいまでに心と脳裏に渦巻く甘美で破滅的なイメージ――それこそ太古から人が直面し、音楽とか絵画とか宗教とかいろんな形に定着させてきたもの――と真っ向から向き合ってロックを紡ぐ表現者の、心からの言葉だった。最後、世界への警告のような“Arlequin”のギターから“こわれる”“白痴”、そして《僕はいつも祈っている そして幸せになる 世界中のレイプ犯と 同じ身体の仕組みで》という“picnic”への怒濤の流れは、それこそこの世の終わりをも描き切ろうとするかのような気迫と衝撃に満ちていた。(高橋智樹)
1.philia
2.chil
3.僕らの悲鳴
4.she lab luck
5.アマレット
6.BROOKLYN
7.ewe
8.mer
9.chernobyl
10.echo
11.para
12.dnim
13.keep me keep me keep me
14.ガムシロップ
15.Arlequin
16.こわれる
17.白痴
18.picnic
アンコール
19.ア_-オ
アンコール2
20.バースデイ
