チケットはソールドアウトしており、もちろんフロアは前も後ろもパンパンのすし詰め状態。はち切れんばかりの熱気に包まれる中、お馴染みのSE、山下達郎の“Sparkle”が流れると、斉藤伸也がロングヘアを一つに結んで現れた。髪を結んでいたシュシュを豪快にほどいてロングヘアをなびかせては、フロアの大歓声を誘う。初めて観たときは、その強烈なインパクトに驚きを隠せなかったけれど、今となってはこの姿が見られるのも最後なんだなとしんみりした気持ちもある。だが、そんな思いも吹き飛ぶくらいの勢いで斉藤は最高の笑顔でシュシュをフロアへ投げ込み、相変わらずパンチの効いたオーラを放つ。
高揚感たっぷりのギター・ソロを聴かせてくれるサティフォ(G)と背中合わせになったり、向き合ったりしながらリズミカルなカッティング・ギターでバンドを煽動していく斉藤を見ていると、やはりグッと胸がこみあげるものがある。“summer time”や“sexy sexy”で聴かせてくれる柔らかくて甘い囁きのようなコーラスも竹電に欠かせない要素としてより一層の存在感を放っていて、小気味よいカラフルなポップチューンも少し切なく響いてきてしまう。しかし、そんなウェットな気持ちは、会場が一つになった“jyanga jyanga”の「シャバダバ」合戦で一蹴。目をひん剥いてものすごい表情で「シャバダバ、シャバダバ」歌う斉藤に、精一杯の「シャバダバ」コーラスで応えるオーディエンス。笑いと涙とが同時に溢れてくるような最高にハッピーな空間だ。山下が「10年間の付き合いだけど、まだステージ上で笑える」と言うくらい、毎回見ているメンバーさえも笑わせてしまうという愛されキャラの斉藤に会場も和む。
「ここからはギアをトップに入れるんだ!」と斉藤が煽動していき、会場一体がハンドクラップとジャンプに沸いた“beat”をはじめ、“Don't Stop The Time”では特別なワンマンということでメンバー紹介も盛り込み、それぞれが切れ味抜群のソロパートを熱く展開していった。もちろん斉藤は自慢のダンスを軽やかなステップでキメて、フロアも共に踊りまくり大団円を迎えた。
姿が見えなくなっても拍手は鳴り止まず、その場をずっと動かないオーディエンス。すると、再びメンバーが登場。「みんなの気持ちはすごくうれしいですけど、もう全部やりきった! だから、アンコールはやらない! ありがとうございます!」と潔く言い切る斉藤。最後にリーダーのサティフォが語った。「お互い憎みあって別れるわけじゃないし、40、50歳になってまた斉藤と何かをやってるかもしれないし。そういうノリです。哀しいことじゃないし、いつでも会えるから。竹内電気も1からスタートするし、斉藤も1からスタートする」と話したところで、斉藤が「1!」と叫び、続けてサティフォが「2!」と叫び、雪崩れ込むように全員が「3!」と叫んで「ダーーー!」と予想もしない終わり方に。最後の最後は斉藤による一本締めで終了。本当に笑顔の絶えない斉藤東京ラストライブだった。「斉藤が気持ちよくサヨナラできるように26日に来られない方は祈ってください」と山下が言っていたように、ラストは彼らの地元である名古屋でのファイナルだ。行く人は斉藤最後の雄姿をしっかり見届け、行けない人は無事ライブが成功することを祈ろう。とにかく、これからの4人の竹内電気と斉藤伸也の新たな門出を祝した最高にピースフルな卒業ライブだった。(阿部英理子)