モトリー・クルー @ Zepp Tokyo

モトリー・クルー @ Zepp Tokyo - pics by Yoshika Horitapics by Yoshika Horita
モトリー・クルー @ Zepp Tokyo
フロアに入った途端に耳に入る「前方のお客様には、演出効果のため、液体がかかるおそれがありますので……」といういつになく念入りなアナウンス。そして、ほぼオンタイムで場内が暗転し、“Wild Side”の爆音が鳴り響く!……のと同時に、ステージを囲っていた幕が落ち、ステージ後方の円形の鉄骨が目に入った瞬間、満場のZepp Tokyoのヴォルテージは一気にMAXに! そう、この日集まった、元ロック少年少女世代を中心としたファンはみんな知っているのだ。冒頭の念入りなアナウンスが決して伊達でも形式的なものでもないことを。そして、舞台に組まれた円形のトラスが「ただの鉄骨」ではないことを。『LOUD PARK 08』大トリのステージをさいたまスーパーアリーナ一丸の“Home Sweet Home”大合唱で堂々締め括ってから実に3年。デビュー30周年アニバーサリー・ツアーとして、そして「原点回帰」のクラブハウス・ツアーとして絶賛世界サーキット中のモトリー・クルーの、待望の単独ジャパン・ツアー! 名古屋/大阪×2公演に続き、ここZepp Tokyoでの東京3デイズ公演もいよいよ開幕! 名古屋/大阪とほぼ同じなのだが、セットリストがまずすごい。

01.Wild Side
02.Saints Of Los Angeles
03.Live Wire
04.Shout At The Devil
05.Same Ol' Situation(S.O.S.)
06.Primal Scream
07.Don't Go Away Mad(Just Go Away)
08.Home Sweet Home
(ソロ・パート:トミー・リー/ミック・マーズ)
09.Looks That Kill
10.Dr. Feelgood
11.Too Young To Fall In Love
12. Too Fast For Love
12.Girls, Girls, Girls
13.Smokin' In The Boys Room
14.Kickstart My Heart

“Saints Of Los Angeles”のような最近の楽曲から“Shout At The Devil”といったモトリー・クラシックスまで、8月10日にリリースされたベスト・アルバム『Greatest Hits』の楽曲の中でも「お前らこれが聴きたいんだろ?」という楽曲を(しかもニヒリズム皆無で)抽出して畳み掛けるような、まったくもって爽快なアクト(この日は『Greatest Hits』以外の曲は1st『華麗なる激情(Too Fast For Love)』の“Live Wire”のみ)。何より、ヴィンス・ニール(Vo)/ニッキー・シックス(B)/ミック・マーズ(G)、そしてトミー・リー(Dr)の4人の、あたり一面を炎に包むようにばりばりと鳴り渡るタフな轟音の迫力! 「LAメタル」と呼んでも「バッド・ボーイズ・ロックンロール」と呼んでもいいが、ヘヴィ・メタルと呼ぶにはあまりに荒くれ者でささくれてて、ロックンロールが怖じ気づくほどワイルド&グラマラスな音と佇まいは、30年経っても目眩がするほどの輝度とフレッシュさを備えているし、モトリー・クルーにしか生み出せない荒ぶる熱狂は30年経っても上書きされずにいる――ということを、“Wild Side”から徹頭徹尾大合唱であふれ返るZeppの空間を目の当たりにして改めて感じた。トミー&ニッキーが繰り出す重めのミドル・テンポのビート。ブルージーなソロもメタリックな速弾きも全部まとめてロックの彼方へ轟々と撃ち放ってみせるミックのギター。そして、連戦の疲れもどこへやら、Zeppの空気が自然発火するんじゃないかと思うくらいのエネルギーでオーディエンスを片っ端から鼓舞して回るヴィンスのヴォーカル! 「セックス・ドラッグ・ロックンロール」を地で行くような破滅的な季節を後にして、そのゴージャスでダイナミックなロックの熱量だけを抽出し、2011年という時代に叩きつける不屈の黒光りタフネス。最高だ。

そして、トミー・リーだ。“Home Sweet Home”で麗しのピアノ・プレイを聴かせ……たかと思うと、爆裂ドラム・ソロを披露しながら、ドラム台ごと円形の鉄骨レールに沿ってスウィングし、やがてぐるんぐるんとジェットコースターの如く回転し始める。さらに「誰か一緒に乗ってみるか?」とフロアに呼びかけ、ゲイシャ姿の観客と一緒にコースター・ドラム大会へ! 奇しくもトミーの誕生日でもあったこの日、「今日は3日間の初日でもあるし、トミー・リーのファッキン・バースデーだ!」というニッキーのコールとともにバースデー・ケーキが運ばれてきて会場全体で♪ハッピー・バースデー を歌い上げる……という一幕も含め、ヴィンス/ニッキー/ミック/トミーというオリジナル・メンバー4人がこうして30年後の「今」を謳歌している喜びがびしびしと伝わってきて嬉しかったし、「30年前、俺たちには最高のフェイヴァリット・シンガーがいた。ミック・ジャガー、ロバート・プラント、スティーヴン・タイラー、そして……ヴィンス・ニール!」というニッキーのコールには、思わず胸が熱くなった。ちなみに、名古屋/大阪では“Too Young To Fall In Love”の後に“Too Fast To Love”(!)や“Ten Seconds To Love”が加えられていたらしいが、その分はトミー・リーの誕生日パーティーの場面だけでも十分おつりがくる、と個人的には思った。

“Looks That Kill”以降の爆音連射には気が遠くなるほどの悦楽と高揚感で身体も心も満たされまくったし、ラストの“Kickstart My Heart”でぴゅーぴゅー血糊を噴きながらステージをのし歩くニッキーには感激と笑いが止まらなかった。すべての音が鳴り止み、「30 Years of CRUE アリガトウ トウキョウ」の文字が背後のヴィジョンに浮かぶ中、メンバーそれぞれがブリキの丸缶になみなみと入った血液(に見立てた赤い液体)をざんぶとフロアにぶっかけまくったのは、彼らなりの最大限の感謝の気持ちだろう。アンコールこそないものの、1時間半強にわたってモトリー・クルーの真髄そのものが吹き荒れたステージだった。最終日=5日はすでにソールドアウトしているものの、4日は若干数ながら当日券が出るようだ。詳しくは招聘元=クリエイティブマンのHPをご参照のこと!(高橋智樹)
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