このツアーは来週の大阪2日間を残しているので、曲順や演出等の詳細な説明は差し控えるが、いうまでもない定番曲はもちろんのこと、要所で披露された新曲やライヴハウスだからこそ可能な見せ方など、このツアーに向けての特別な意気込みが存分に発揮されたものだったことは間違いない。もっと言えば、小さなキャパシティということで数が限られたチケットを熱心に入手してきた濃いめのオーディエンスが多いからこそ、大胆にバンドの本意を見せつけようとする腹の括りっぷりに、ちょっと怖いものさえ感じてしまう瞬間もあった。
開演時刻まで場内に流れていたのは、よくあるロックやポップ・ソングではなく壮大な交響楽。人間の喜怒哀楽をすべて飲みこんだ、喜劇と悲劇が一緒くたになったような厳かな響きに満たされているところがまず往来のライヴハウスとは雰囲気が違うところで、そこからして早くも彼等のカラ―をしっかり打ち出している。しかしながら、そこからスムーズに開演に繋がっていくのではなく、意外にもちょっとしたアトラクションを絡めたショーアップ的な導入が差し挟まれ、せっかくの緊張の糸を意識的に解きほぐしたところで1曲目に最新シングルである「スターライトパレード」が始まるという、ちょっとややこしい流れでライヴはスタートする。
1曲目からのバックライトのおびただしい光量といい激しい点滅といい、ほとんどステージ上の彼等の姿が確認出来ないくらいで、その様子はすでに非現実とでもいうべき「超景色」といった風情。そんな中から立ち上がってくる「死」「神」「正義」という歌詞は、彼等がその曲を書いた時の気持ちや、今なお伝えきれていないメッセージの真意を赤裸々に強調してくるような切羽詰まった緊張感を持って迫ってくるもので、場内の熱気も徐々に厳粛なものへと色を変えていくことになる。
いきなり冷や水を浴びせられたようなスリリングな序盤に続き、最初のMCタイムでようやくDJ LOVEが挨拶。「このツアーも、今日が東京2日間の2日目で、残すところは大阪の2日間だけで寂しいんですが、そんなことも言ってられません! 早速、次の曲」と、一息つくというよりは堰を切るように次の場面に突入。この切迫感こそが実はこの日の大きな柱で、そこからは軽快なロックンロール調の「ファンタジー」が登場しステージ上の照明も通常仕様となり、ミドルの部分で中島が歌うところでは彼もステージ最前線まで迫り、オーディエンスとのコミュニケーションに努めるなど所謂ライヴらしいノリが生まれていくのだが、その時間もそう長くは続かない。
といった具合で、さながらジェットコースターのように、陽と陰、そして日常と非日常がクルクルと入れ替っては、その度に「生」と「死」の意味を実感させる展開は、言ってしまえば彼等のアートとしての音楽にエンタテイメント性を加味してきたこれまでの方法論を、より極端かつ目まぐるしい振れ幅に置き換えたもので、その展開はステージ最後まで一貫して続くものとなる。新曲として披露された「生物学的幻想曲」ではスクリーンに人形達がくるくる踊っては巡る姿が映し出され、曲のテーマである生命のサイクルという命題に視覚的な説得力を持たせる演出が登場。この世界が未来永劫に続くことを願うナンバーではスクリーン上にネット社会に現れては消える、時に重大な、時に無責任な書き込みを続けざまに提示し(「東電だけが悪いのか?」という一言も)、それぞれにとっての正義を問いかける流れにはこちらも思わず襟を正す瞬間も。そして終盤で見せた彼等のテーマともいえる「青い太陽」で聴かせた深瀬のソウルフルとさえ言える歌声は、このツアーが彼等自身がどれだけの緊迫感を持って臨んでいるものなのかを改めて肝に銘じているかのような熱唱だった。
最後、メンバーが順番に上手へはけて行った際、ステージ下手に位置する彼女は最後に
ステージから去ることになるのだが、消える間際に満足そうな表情で投げキスを客席に与えていた。そんなところにも、まだまだ彼等の行く先には大きなエポックが登場しそうな予感も多々あり、可愛らしさとともに末恐ろしいものも感じてしまった一夜。(小池清彦)