キーン @ SHIBUYA-AX

キーン @ SHIBUYA-AX - All pics by 中島亮(SyncThings)All pics by 中島亮(SyncThings)
キーン @ SHIBUYA-AX
キーン @ SHIBUYA-AX
キーンの3年ぶりとなる来日公演である。今年5月にリリースされた最新作『ストレンジランド』自体が前作『パーフェクト・シンメトリー』から4年ものインターバルを擁したアルバムだったし、しかもその間には新メンバーのジェシー・クイン(B)の加入もあった。パーマネントな弦楽器のメンバーが存在しないことはキーンの大きなアイデンティティでもあったのだから、このジェシーの加入はバンドの特にライヴにおけるケミストリーに変化をもたらす契機になったのも想像に難くない。だから、この渋谷AX公演は彼らにとって「カムバック」であり「心機一転」の意味を持つ来日公演でもあった。

正直、私はそんなキーンの日本での人気と言うか、彼の歌の底力、普遍性をこの日のライヴを観るまで少しみくびっていたのかもしれない。なにしろ3年、4年という単位はけっして短い年月ではない。ましてや高速でシーンが移り変わっていく英国の音楽業界にあってギター・バンドの流行り廃りほどシビアなものはないし、2010年にミニ・アルバム『ザ・ナイト・トレイン』をリリースしているとはいえ、こと日本においてはやはりキーンの不在は長く感じられるものだった。しかし、そもそもがそういう業界的なスパンで測り得ない「歌」と「声」の普遍こそがキーンの存在証明であること、彼らがデビュー作から『ストレンジランド』まで4作連続全英1位というとんでもない記録をブチ立てている所以であることを改めて証明したのが、この日のステージだったのだ。

渋谷AXはぎっしりと超満員。しかも彼らの来日を待ち望んでいたダイハード・ファンがみっちり詰め掛けた印象で、開演前からSEに併せて(!)手拍子が巻き起こり、それはステージに彼が登場するや凄まじい大歓声へと変わる。トム(Vo)は少し痩せて以前よりさらに健康的に見える。相変わらずその童顔に似合わないのっぽ君っぷりだが、常時赤みを帯びた頬をさらに紅調させながら満面の笑みでファンの大歓声に応えると、1曲目の“You Are Young”が始まる。『ストレンジランド』のオープニングをなぞるスロースターターなナンバーで、ゆっくりとキーンのキーンらしさが解凍されていくのを感じる。そしてピアノ・イントロが跳ねる“Bend And Break”で、一気に「キーンとは何か」が3年の歳月をワープして立ち上がってくる。

キーンとは何か、それはトムの歌声とティム・ライスのピアノがまるで双子のように互いを支え、映し合う中から生まれる一本の揺るぎない旋律であり、その旋律はいともやすやすと時を越えて、時に彼ら自身のエゴすら越えて「透明な普遍」のようなものを象っていく。それは『ストレンジランド』の楽曲にも健在な彼らの「エゴなき個性」というユニークな個性でもあって、ステージ右上方に「STRANGELAND」と電飾が点滅した“Day Will Come”もまるでずっと以前から彼らの十八番ナンバーであったかのように鳴り、ギター・リフに代わってアップテンポなメロの反復を刻むピアノに煽られて、場内には早くも大きなうねりがうまれてくる。

トムは忙しなくステージを右へ左へ歩きまわり、最前列のファンと幾度も握手を交わしていく。前半のハイライトになったのは“Spiralling”だ。キーンのナンバー中でも珍しいシンセ・ディスコ、ニューウェイヴ調のナンバーで、この時ばかりはファンは横揺れの代わりにホッピングで応え、コール&レスポンスもばっちり決まる。この“Spiralling”の未だかつてないファンキーなヴァージョンは、やはりジェシーの加入が大きかったことを感じさせるものだった。ジェシーによってキーンのバンド・ケミストリーが変わったというよりも、彼らのライヴに新しい武器が、オプションが加わったという印象だ。

そこから一転、中盤は再びトムの声とティムのピアノが中心のナンバーが続く。そして“Everybody’s Changing”ではトムの声とティムのピアノ以上にオーディエンスの合唱がその場の主役になった。「聞こえないよ!歌って!もっと!」と叫ぶトムに呼応するように、キーンの透明な普遍は私達ファンをも覆い尽くし、大合唱の元でひとつになっていく。あまりにもパーフェクトなその光景に、トムは思わずガッツポーズを決める。「新作を持って日本に戻ってこれて本当に嬉しいんだ。次は僕の一番気に入っている新曲だよ」とトムが言って始まったのは“The Starting Line”。鉄琴のような音色のキーボードがトムの声に新たな艶を添えていく。

続く“Your Eyes Open”はトムのアコギ弾き語りで披露される。そして圧巻だったのが“On The Road”だ。これはいわゆる「美メロ」「ピアノ・ロック」と呼ばれるものがどこまでパワフルに、エモーショナルに、ギター・ロックに匹敵する熱を放出できるかの試みのようなナンバーで、実際に彼らはギター無しでスプリングスティーン級の熱い男気ロックを鳴らしてしまう。トムの顔はもう真っ赤になっている。

それ以降の後半戦は新旧入り乱れた「キーンらしさ」の鉄板ナンバーが続き、“Somewhere Only Know”の場内を揺るがす大合唱、そして歌い終えてもなおしばらく鳴り止まなかった拍手と歓声はなかなかお目にかかれないレベルのとんでもないもので、あまりの拍手と歓声の持続にトムは笑い崩れながら思わずドラムセットの前に座り込んでしまったくらいだ。アンコールまで含めて全23曲、2日前の韓国公演でやったらしいクイーン&デヴィッド・ボウイのカヴァー“アンダー・プレッシャー”(!)を聴けなかったことだけが少し心残りだけれど、キーンの「声」と「歌」はいつ、どこであっても、寸分たがわず同じ輝きを放つことを確認できた素晴らしい一夜だったと思う。(粉川しの)

1. You Are Young
2. Bend And Break
3. Day Will Come
4. Nothing In My Way
5. Spiralling
6. We Might As Well Be Strangers
7. The Lovers Are Losing
8. Silenced By The Night
9. Everybody’s Changing
10. Neon River
11. The Starting Line
12. Your Eyes Open
13. Strangeland
14. On The Road
15. A Bad Dream
16. Disconnected
17. This Is The Last Time
18. Somewhere Only We Know
19. Is It Any Wonder?
20. Bedshaped
(encore)
21. Sea Fog
22. Sovereign Light Café
23. Crystal Ball
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