the band apart @ 新木場STUDIO COAST

「SMOOTH LIKE BUTTER」という、the band apartのいつものツアー名に加え、「Q and K」という、暗号のようなサブ・タイトルが銘打たれた今回の秋ツアー。“Q”とはつまり『quake and brook』、“K”が意味するのは『K. AND HIS BIKE』――そう、要するに前者2ndアルバムと後者1stアルバム収録曲を中心にセットが組まれるという、バンドとしても初となるコンセプト・ツアーなのだ。古くからのファンにはノスタルジー含みで胸アツの、新しいリスナーにとっては新鮮なバンアパ体験となるであろう、貴重なツアーの2本目をダイジェストしたいと思いますが、まだツアーは続くので参加予定の方はネタバレご了承の上、お読みいただけると幸いです。

ライブのオープニングを飾ったのは、『quake and brook』冒頭のアッパー・チューン「coral reef」。4人が最初の一音を奏でるや「ワーーッ!」という大歓声が沸き、場内の熱が一気に高まる。続けて、平原をわたるような「my world」の爽快なグルーブがCOASTを席巻し、ドライブ感溢れる「from resonance」でフロアはさらにヒートアップ(ギター川崎もステージ前でヘッド・バンギング!)と、『quake〜』の世界を完全再現するように、収録順どおりにプレイされていくのだった(ドラムス木暮曰く、「メタリカのマネした」そう)。まだツアー序盤ながら、そのアンサンブルは一枚岩の一体感としなやかさを誇っていて、『quake〜』リリース当時のライブ経験者としては、バンドの成熟みたいなものをまざまざと実感することにも。「こんなに人がいてびっくりしてます。昔の曲やりますって言ってこんなに集まってくれるってことは、みんな結構、歳いってるのかな?」(荒井)とMCではオーディエンスを笑わせつつ、フュージョニックなグルーブ感を取り入れた2ndのナンバーが心地よくもエキサイティングな快楽曲線を描いていった(「higher」から「amplified my sign」に繋いだ「RECOGNIZE ep」のフェーズでは、ひと際大きな歓声が!)。中盤には、今年7月に発表した最新作「2012 e.p.」の楽曲もプレイ。中でも「スウェルター」の疾走感と弾力性にも富んだサウンドには、アレンジメントにおける進化と深化が伺えたし、アコースティック・セットで奏でた「forget me nots」は、4人で多くの時間とシーンを重ねたからこその親密な味わい深さがあった。

ライブはそのまま後半戦へとなだれ込み、今度は「FUEL」「cerastone song」といった1stアルバム『K. AND HIS BIKE』収録ナンバーが躍動。2003年のリリース当時、この作品に出会った衝撃と興奮がありありと蘇りながら、未だ清冽なインパクトと高揚感を描き出す楽曲群に、思わず「名曲揃いやないかーい!」と、 ひと昔前の手法でツッコミたくなってしまったほど。メロコアの全盛を経て青春パンク隆盛期にあった当時、ヘヴィ・ロックやハードコア、ポスト・ロック、ファンクのテイストも織り込んだ、その他大勢とは一線を画するドライブ感と爽快感溢れるサウンドで登場した彼らは、まさに“ゲームチェンジャー”だったんだなあと、1stの世界感に浸りながら改めて思い至った次第。早いもので、この『K. AND HIS BIKE』のリリースから9年――その間、自分たちの事務所やスタジオを作ったり、アメリカや台湾、フランスでの海外公演を行ったり、突発的な事務所の解散劇があったり、ベーシストがアニメにハマったり急性膵炎で緊急入院したり、レーベル社長が激太りしたり、また1000年に1度と言われる大震災があったりと、悲喜こもごもいろんなことがあったけれど、バンドが変わらずシーンの先頭集団といえるポジションにあって、こうしてSTUDIO COASTを満杯にしてお客さんを「Yeah! Yeah!」熱狂させているということが何より嬉しく、また、頼もしくもあった(それぞれに成長を遂げながら、今でもバンド組みたての友達のように仲のいい4人であることも嬉しい限り)。そうそう、メンバー自身、ステージ上でちょっとした感慨に耽ってもいました。

原「もう一緒にいて、どんくらい経つの?」
荒井「俺が16歳のときからだから、18年とか? ウイスキーいいのできちゃうくらい(笑)」
原「当時の俺らに、ちょっとお前らの18年後見せてやるよっつって見せたら、狂い泣きすんじゃない? そう思うと感慨深いですね。バンドやってると、ずっと青春が続いてるようなことができるっていう。だから、バンドやれっていうことですよ。バンドやった方がいいよ、ホントに」
荒井「みんなの青春の1ページに俺たちが食い込めてたら嬉しいよね」

バンドはWアンコールにも応え、 2時間を超える大一番は熱狂のうちに幕を閉じたのだった。果たしてこの企画の続編として、3rdアルバムと4thアルバムを再現する「al and ad」もありえるのか?(個人的には久々に「KATANA」が聴きたいッス!)。ともあれツアーはまだまだ続くので、参加予定の方は存分に楽しんでください!(奥村明裕)
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