PUNKSPRING 2013 @ 幕張メッセ9・10・11ホール

2006年から開催されている日本最大級のパンクの祭典『PUNKSPRING』も今年で7回目(2011年は震災の影響で開催中止)。昨年の東京(幕張メッセ)・大阪(神戸ワールド記念ホール)2会場に加え、今年は名古屋:Zepp Nagoya公演も含め3会場での開催! 3月28・29日:名古屋、30日:大阪と巡ってきた『PUNKSPRING 2013』もいよいよこの日がファイナル。小雨がパラつく幕張は前日の『Springroove 2013』以上に肌寒かったが、『PUNKSPRING 2013』に集結したキッズは気合い十分。開場を待っていた多くの人が開場と同時に屋外のグッズ売り場へ直行、タオルやTシャツをゲットしては巨大なメッセの空間を期待感と熱気で満たしていく。WEEZER/NOFXをはじめSIMPLE PLAN/PENNYWISEといった海外の猛者たち、そしてONE OK ROCK/MAN WITH A MISSION/Fear, and Loathing in Las Vegas/NAMBA69など日本の精鋭を擁する爆音と衝動の祝祭空間がついに幕張メッセに到来!

今年のヘッドライナーは初登場:WEEZER! かつて「泣き虫ロック」とまで評された彼らが、世界の強豪ひしめくパンク祭典のトリを飾るのは妙に感慨深いが、“My Name Is Jones”のハード・ポップぶりでメッセの温度を上げ、“Hash Pipe”でシンガロングの輪を生み出し……といった幕開けからオーディエンスの情熱と感情を底から震わせ、痺れるようなギター・サウンドとメロディででっかい歓喜の風景を描き出していくのはさすがだ。他のUSパンク・アイコンに比べるとリヴァース・クオモの佇まいはやはり段違いにナイーブではあるが、「いいね! だんだんよくになってきたね(「よくなってきたね」の意らしい)」といった凸凹日本語MCでフロアを沸かせながら、観客のハートをぐいぐい惹き付けて濃密な磁場を作り出してみせる。「スコットさん、ちょっと歌ってください」とスコット(B)に“Dope Nose”の歌を任せた後、「そういえば、他のスコットさんもいます!」とALLiSTERのスコット・マーフィー(アルバム『スコットとリバース』を共作)を「RED STAGE」に呼び込んで“Homely Girl”もやったし、“Beverly Hills”も“Say It Ain't So”も“Pork And Beans”も“Buddy Holly”もやったし、それこそウィーザー・ファンのツボを全押しするような1時間だった。

前日の『Springroove』同様「RED STAGE」「BLUE STAGE」の2ステージ制で開催されている今回の『PUNKSPRING』、一方の「BLUE STAGE」のトリを務めたのは07年・09年に続いての登場となるNOFX! 元祖メロコアの貫禄とタフネスを感じさせるサウンドで“Murder The Government”“Franco Un-American”“Fuck The Kids”などを速射砲のように炸裂させつつ、ファット・マイクは至ってリラックスした様子でエル&エリックのギター組とMC(というか会話)を交わしながらフロア丸ごとNOFX空間に巻き込んでいく。ちなみに、今年はNOFX結成30周年アニバーサリー・イヤーということで、ライブの途中でステージにバースデーケーキが運び込まれ会場が♪Happy Birthday To You〜の歌声で包まれるという一幕も。舞台に姿を見せたNAMBA69・難波章浩の「このケーキ、Hi-STANDARDからです!」の声に、観客から熱い歓声が上がったことは言うまでもない。

いきなり“Shut Up”で壮大なハンドウェーブの風景を作り上げたSIMPLE PLANでは、“Can't Keep My Hands Off You”でWEEZERのリヴァースを、そして“Summer paradise”でONE OK ROCKのTakaを招いてメッセを熱狂へと導いていたし、昨年復帰したジム・リンドバーグ(Vo)を擁しての出演となったPENNYWISEは25年のキャリアで鍛え上がった骨太爆走パンク・サウンドでフロアを圧倒してみせたし、LAGWAGONは“Violins”“Mr.Coffee”といったファスト・ナンバーで観客を身体ごと揺さぶる中でジョーイが「『PUNKSPRING』、カンパーイ!」と酒を掲げたりマイクのシールドで縄跳びを始めたりして会場を沸かせていた。そんなレジェンドたちの名演怪演の一方で、ブルー・グラス/フォーク・パンクの雄=OLD MAN MARKLEYがフィドルやバンジョーで天日干しのカラッと爽快なカントリー・パンクを鳴らし、USメロディック・ハードコアの担い手=TITLE FIGHTが燃え盛る絶唱で頭と心を震わせ、MAYDAY PARADEの鳴らすポップ感とスケール感がメッセに爽快な風を吹かせ……といった00年代組の活躍も光っていた。

そして――洋楽パンク勢に負けず劣らず、オープニングを務めたKNOCK OUT MONKEYをはじめ、トリプル・ギターの轟音越しに新次元の絶頂感をアピールしていたex.BEAT CRUSADERS・ヒダカトオルの新バンド=THE STARBEMS(この日が初ライブ!)、メタルとハードコアが赤黒く渦巻く音像とスラッシュ・ビートが衝撃映像集のような緊迫感をもって広がったSiMなど、日本のバンドたちがはちきれんばかりの闘争心を突き上げていたのが印象的だった。特に、この日の後半に登場した若手バンドたちのハートに火をつけたのはやはりこの人、難波章浩。3ピースの新バンド=NAMBA69として「BLUE STAGE」中盤にオン・ステージした難波が「目覚めようぜ日本!」と“WAKE UP”を響かせた瞬間、巨大なメッセ狭しと噴き上がる怒濤のエモーション! “LEVEL 7”とその後のMCで原発に真っ向からNOを突きつけ、「みんな輝いちゃおうか!」と“STAY GOLD”の轟々たるシンガロングで会場を包んでいく。“未来へ~It's your future~”で圧巻のアクトを締め括り、「ステイ・ロック、ステイ・パンク!」と叫んで舞台を後にする難波の姿は、見ているだけで胸が熱くなるような力強さに満ちていた。

昨年に引き続いての登場となったONE OK ROCKは、最新シングル曲“Deeper Deeper”から“完全感覚Dreamer”まで鉄壁のセットリストでメッセを完全支配、日本代表として十分すぎる存在感とダイナミズムを体現していた。“distance”“Emotions”などハイブリッドでエモーショナルな爆音に汗だくで踊り歌いまくるオーディエンスに「スバラシイケシキデス。ミンナ、イカレタヤロウバッカリデス!」と最大限の賛辞を贈ってみせたのはもちろんオオカミ集団・MAN WITH A MISSION。Fear, and Loathing in Las Vegasはエレクトロコアという言葉すら置き去りにするような鮮烈でスリリングなサウンドを四方八方に轟かせてあたり一面を阿鼻叫喚のダンス・ワンダーランドに塗り替えていたし、“PARTY PARTY”や“OVER DRIVE”でフロアを揺さぶったTOTALFATの「これからも日本人として、TOTALFATとして、シーンを盛り上げていきたいと思います!」というShunの決意表明はひときわ熱い喝采を巻き起こしていた。

11時の開演を彩ったヒカル(BOUNTY HUNTER)のオープニングDJからWEEZERのアンコール“Undone - The Sweater Song”まで実に11時間にわたったパンクの祭典は今年も大成功。すでに公式サイトには「THANK YOU & SEE YOU NEXT YEAR!!」の文字が。次はどんな灼熱パンク天国を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。また来年!(高橋智樹)
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