BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場

BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - FATBOY SLIMFATBOY SLIM
海浜幕張の駅に降り立った時点で、既にものすごい人出。あ、幕張メッセでAKB48の握手会が行われるからか、と思いながら海浜公園に向かったのだが、違った。こちらも入場ゲートから大混雑、ビーチを埋め尽くさんばかりの人・人・人なのである。5年連続、同会場で4度目の開催を迎え、初夏の大型レイヴとしてすっかり定着したBIG BEACH FESTIVALではあるのだが、それにしても今回は見るからに驚異的な来場者数を記録していた。ファットボーイ・スリムとケミカル・ブラザーズが1年ごと交互にヘッドライナーを務めるスタイルも定着しており、今年はファットボーイ・スリムのターン。さすがのファットボーイではあるけれど、しかし、それだけの理由でこれほどの動員を記録するだろうか。嬉しくも興味深い疑問が、頭をよぎった。

BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - 田中知之田中知之
BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - 大沢伸一大沢伸一
BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - NERVONERVO
砂浜にどん、と設置された最大規模ステージのBIG BEACH stageと、幕張の海を正面に見渡すISLAND stage、テント型でややクラブ風のムードを内包するDisco Balloonと、メイン3ステージを軸に運営される方針もこれまでと同様だ。Disco Balloonには田中知之(FPM)や大沢伸一といった、BIG BEACH FESTIVALにおいてもお馴染みの邦人DJたちが名を連ね、クローザーには華やかな女性DJ/プロデューサー・デュオ=NERVOが、最も遅い時間帯までアップリフティングなEDMでダンサーたちを湧かせていた。

BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - SEKITOVASEKITOVA
BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - MAYA JANE COLESMAYA JANE COLES
BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - EROL ALKANEROL ALKAN
BIG BEACH stageのトップに抜擢されたのは、繊細でオーガニックなプロダクションが注目を集める18歳の気鋭邦人クリエイター、SEKITOVA。続いて硬質なビートを心地良くビーチに鳴り響かせるテック・ハウスのマヤ・ジェーン・コールスが登場し、3番手には個人的にも楽しみにしていたエロール・アルカンが立つ。UKニュー・ウェイヴと現代的なダンス・ビートを橋渡ししたエレクトロクラッシュという記号も今や死語になりつつあるが、伊達男な佇まいのエロールが冒頭の30分ほどを使って、ウェットかつセンチメンタルなシンセ・ポップから、次第に逃れようのない高揚感をドラマティックに形作ってゆく。エレクトロクラッシュここにあり、である。ファンキーなグルーヴ、サウンドの揺れ、それらがいちいち腑に落ちる。これはいわゆる世代感覚というやつなのだろうか。多くの若い人たちも、目一杯盛り上がっているように見えたけれど。

BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - BASEMENT JAXXBASEMENT JAXX
今回の開催で重要なトピックのひとつとなったのは、やはりベースメント・ジャックスのライヴ・セットだろう。フォルクローレ風の民族衣装を近未来風にデザインしたような、スカイブルーの衣装を纏うバンドと、入れ替わり立ち替わりで登場する男女ヴォーカリストたちによる、極めて情熱的なパフォーマンス。生々しいダンス・グルーヴの序盤に“Randez-vu”や“Red Alert”を畳み掛け、女性ヴォーカルにサイモンのギター伴奏が寄り添うだけの“Romeo”や、ほんの一瞬だったがフォーキーでシンフォニックなアレンジが素晴らしかった“Raindrops”といったライヴならではの展開も見せてくれる。新曲“Back 2 The Wild”もがっちりと盛り上がっていた。ライヴ中に行われてしまった恒例のフライト・ショー(航空機のアクロバット・ショー)のおかげで、興奮しつつも、ステージを観ればよいのか空を見上げればよいのか困ってしまったが、バンドの面々も楽めたようで、“Where’s Your Head At”でステージを一度フィニッシュした後も「あと10分出来るらしいぞ!」とダッシュで戻って来て大サービスのステージを見せてくれた。来るニュー・アルバムが楽しみだ。

BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - ELLEN ALLIENELLEN ALLIEN
BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - SASHASASHA
BIG BEACH FESTIVAL ‘13 @ 幕張海浜公園内 BBF特設会場 - FATBOY SLIMFATBOY SLIM
Tシャツにタンクトップを重ね着したカジュアルな佇まいがかっこいいエレン・エイリアンは、ストイック過ぎず、キャッチー過ぎない、絶妙なテクノで一貫している。彼女の後にISLAND stageのアンカーを務めたサシャも、幻想的なフレーズがリフレインする記名性の高いサウンドを、陽の落ちたビーチに鳴り響かせてくれて最高であった。豪華な顔ぶれに目移ろいしつつ、クライマックスはやはり2年ぶり登場のファットボーイ・スリムことノーマン・クックのDJ。“Right Here, Right Now”からのカウントダウン、そして“The Rockafeller Skank”のキラー・フレーズをまぶしたEDMチューンを投下し、まんまとビーチ一面の人々を笑顔まみれにしてしまうミスター・スマイリーなのであった。以前にも感じたが、ヘッドライナーに合わせてきっちりとPAを調整しているのだろう、音響の良さがズバ抜けている。2時間のロング・セットの中では“Mas que nada”やワン・ドロップ・ビートのブレイクスも織り交ぜるビッグ・ビート伝道師としての顔も見せ、今回の来場者数に比例するかのような、盛大な花火が打ち上げられて歓喜のダンス・パーティは幕となった。

BIG BEACH FESTIVALの根底に流れているエネルギーというか動機は、かつて英ブライトンでファットボーイ・スリムが開催した伝説的な巨大パーティ=BIG BEACH BOOTIQUEへの憧れだと思う。ある世代にとって、記憶と体に染み付いたダンス・ミュージックを、最良の形で具現化したい。そういう、時代の流行り廃りを越えた、ヘルシーだが半ば怨念とも復讐心とも言える、決して侮るべきではない想いが、このフェスを支えているように思える。ポップ・ミュージック、とりわけダンス・ミュージックは時代の動きをもろに反映するものだが、その一方で、こんなふうに記憶と体に染み付いた想いが駆り立て、大成功を収めるフェスのユニークなあり方について、改めて考えさせられた1日であった。(小池宏和)
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