京都大作戦2013 ~天の川 今年も宇治で 見上げな祭~(2日目) @ 京都府立山城運動公園

「やっぱあれやな、死んだらあかんな! 若い頃は『生きててもおもろない』って思ったこともあったけど……生きてたらすごいことあるな!」。アンコールで涙と感激でぐしゃぐしゃになった顔で語りかける10-FEET・TAKUMAに、満場のオーディエンスが惜しみない拍手と喝采で応える――10-FEETが地元:京都で主催するロック・フェス『京都大作戦2013』2日目。それぞれに「他のどのフェスでもない『京都大作戦』に出演する意味」を持って集結した出演アーティストと、「『京都大作戦』を観に来る意味」を持って集まったオーディエンスだからこそ作り出せる、すべての場面が決定的瞬間のような1日がここにはあった。開演前、MC:MOBSTYLES田原氏とともに舞台に立ったのはTAKUMA。自主的にゴミを拾ってくれる参加者への感謝の気持ちを伝え、「『みんなの遊び場』ということで、ゴミゼロを他のフェスとかライブハウスにも広げていこう!」と呼びかける言葉に、朝イチから熱い拍手が湧き起こる。会場一丸のカウントダウンから『京都大作戦2013』2日目、開演!

「あの丘を越えるのに5年かかった! 2013年、この手で夢を掴んだ!」(MAH)と、2008年「牛若ノ舞台」初出演から5年越しでメイン・ステージ「源氏ノ舞台」に立った喜びを叫び上げつつ、いきなり“KILLING ME”で高らかなシンガロングを生み出してみせたレゲエ・パンクの精鋭SiM。「渦巻き作りたいねんけど、力貸してくれる?」(ATARU) 「今日の主役はお前らや!」(JYU)と“T.H.2”で特大サークルを描き出し、TAKUMAを呼び込んで“EXTINCT FREEDOM”でフィールド丸ごとアゲ倒してみせたのは大阪ラップ・メタルの雄=UZUMAKI。「最高のお客さんを前に、最高の演奏をしようと思います! 闘うように楽しんでくれー!」という谷中敦の号砲のようなコールと“SKA ME CRAZY”“ルパン三世'78”などエネルギーのカタマリのようなサウンドの一斉放射で宇治の山を一大ダンス天国に塗り替えた東京スカパラダイスオーケストラ……灼熱の陽射しと競い合うような熱いアクトのひとつひとつが爽快なヴァイブを生み、会場をでっかく包み込んでいく。

「『京都大作戦』! 俺たちとお前たち、どっちが最後まで立ってられるか、勝負だ!」というNOBUYAの宣誓から、“This World”ではMAN WITH A MISSION・Tokyo Tanaka&10-FEET・TAKUMA、“Error...”でHEY-SMITH・Iori(Tp)&満(Sax)、とゲスト入り乱れた爆演でキッズの熱気に真っ向勝負で挑んでいたのはROTTENGRAFFTY。そして、「普通にやりにきたんじゃないんですよ! 奇跡を起こしに来たんですよ!」「ここでミラクルを起こして、東北に伝えたいわけ!」という情熱あふれっ放しの山口隆の絶叫と“世界をかえさせておくれよ”“I love you & I need you ふくしま”の魂の熱演でオーディエンスとでっかく響き合ったサンボマスター、「こんなミラクルを起こしたあんたらにできねえことがあんのか!」と“できっこないを やらなくちゃ”を炸裂させて、観る者すべての情熱を噴き上がらせていく。この日のサブ・ステージ「牛若ノ舞台」も朝から熱い! THE SKIPPERS/LABRET/HAKAIHAYABUSA/SLANG/G-FREAK FACTORY/SCOOBIE DO/SHANK……新鋭も古豪も含め多彩なサウンドが入り乱れながら、2日目の『京都大作戦』の高揚感をさらなる絶頂へと導いていた。

一方「源氏ノ舞台」のトリ前は、Hi-STANDARDの難波章浩&Ken Yokoyamaが惑星直列を果たした奇跡のラインナップ。まずは一昨年の「難波章浩-AKIHIRO NAMBA-」名義での出演から2年、新たに「NAMBA69」を率いて難波章浩が登場! 「ゆっくりなのか何なのか、てこてこ歩いてたら、このステージに辿り着いたよ。諦めたらダメだよね!」と再びこの地に立った感慨を語りつつ、「パンク・ロックは鳴り止まないよ!」と“PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT”を叩きつけ、“ONE MORE TIME”でいくつものサークルを生み出し、パワフルな歌とソリッドな激烈3ピース・サウンドで圧倒的な存在感を見せつけていく。「七夕だな……星に願うか!」という難波の言葉に続けて披露したのは、最強のパンク・ロック・アンセム=ハイスタ“STAY GOLD”! 会場狭しと轟々と沸き返る熱狂を、さらに“未来へ~It's your future~”のビートと歌でがっしり抱き締めてみせた。続いて『京都大作戦』初登場・Ken Yokoyama! 「今年は電話なかったら、こっちから逆オファーかけてやろうと思ってた(笑)」と今日この場所への想いを語っていたKen。日の丸をマントのように羽織りながら「俺は右翼でも左翼でもない、ただ、40代のおっさんだよ。なんでサッカーの時しか日の丸振っちゃいけねえんだよ!」と放った“This Is Your Land”は鮮烈なメッセージとして胸に刺さったし、「いろんなもんとケンカしてきたけど、日本がピンチになったら、俺らひとつだわ!」という言葉とともに何度もマイクをフィールドに投げながらシンガロングを誘っていた“We Are Fuckin' One”は、今この時代への強靭な凱歌として頭と身体を響わせた。パンク・ロックの揺るぎない闘争精神そのもののような熱気が、終幕の近づいた「源氏ノ舞台」に満ちあふれていた。そして――。

18:40、いよいよ2日間のヘッドライン・アクト=10-FEETの演奏がスタート! いきなり切迫したエモーションで観客1人1人の心に火をつけた“その向こうへ”。「もっと見してみろ!」というTAKUMAの煽りからフィールド丸ごとブレーキ壊れた狂騒空間へと突入した“stone cold break”。センチメンタルな疾走感に満ちた“back to the sunset”……TAKUMA/NAOKI/KOUICHIの表情は、「晴れの場の祝祭感」よりも、この奇跡のような瞬間が実現していることそのものへの、そしてこの場に集まってその奇跡を実現させているオーディエンス、出演者、スタッフへの切実な感謝と誠意にあふれていた。切々とゴミを懸命に拾ってくれるキッズへ、鬱で辛かった若い頃から16年TAKUMAを元気づけてくれて2月に天国へ行った犬へ、そしてこの国に生きる1人1人の未来へ……真摯な想いをひとつひとつ語っていくTAKUMA。“シガードッグ”では♪来年もこの丘であなたと〜、“RIVER”では♪流れゆく天の川〜と歌詞をアレンジして、今この瞬間の歓喜にさらに目映い輝きを与えていたのが印象的だった。

“goes on”ででっかく本編を締め括った後、アンコールでは“super stomper”に続けて、この日同じステージに立った難波章浩&Ken Yokoyamaへのありったけのリスペクトをこめて演奏したのは“STAY GOLD”! フィールド狂喜乱舞――の途中で、なんと難波&Ken本人が舞台に登場。驚きを隠せない様子の10-FEETの3人に歩み寄ると、KenがTAKUMAのギターを、難波がNAOKIのベースを構えて“STAY GOLD”の続きを演奏! この日MAXの歓喜を身体いっぱいに表してでっかいシンガロングを生み出すオーディエンス以上に、それこそいちキッズに戻ったような勢いで、舞台上で高々とジャンプしまくり、サークルを描いて走り回るTAKUMAとNAOKI。演奏が終わった後、難波は会場すべての人に向けて「リスペクト!」と力強く叫んでいた。リスペクトの対象としてではなく、この場所へ最大のリスペクトを伝えるために、難波&Kenはもう一度舞台へ登場して、この最高の瞬間を描き出してみせた。それが何より感動的だった。

曲が終わり、Kenからギターを受け取ったTAKUMAは肩を震わせて号泣している。「俺のギター、あんな音出んねや……」。全身から感慨をあふれさせながら「生きてたらすごいことあるな!」と叫び上げ、『京都大作戦2103』の2日間のフィナーレ=“CHERRY BLOSSOM”へ。《人はいつか死に そしてまた生まれる》という最後のフレーズに続けて「死ぬなよ!」と懸命に叫んでいたTAKUMA。「ライブ終わってから俺ら『すげー!』しか言ってないっす!」(TAKUMA) 「夢が叶った!」(NAOKI)――MC・田原氏と締めの挨拶に立った時も、3人はまだ喜びに包まれたままだった。「来年もまた、集まれたら集まりましょう!」というTAKUMAの言葉が、熱い余韻とともにフィールドの隅々まで広がっていった。

以上、2日間にわたって京都からお伝えしました。各アクトの詳細な内容も含めた記事が7月30日発売『ROCKIN'ON JAPAN』に掲載されますので、そちらもお楽しみに。(高橋智樹)
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