昨年11月30日にオープンしたライブハウス「EX THEATER ROPPONGI」のオープニング記念として今年1月に行われた新春対バンシリーズ「GO LIVE VOL.1」の特別公演「EX THEATER OPENING SERIES GO LIVE ex.」として、くるり×ストレイテナーによる夢の競演が実現! 「くるりとストレイテナーってあんまりピンと来ない人がいるんじゃないかなと思うんですけど。一昨年の『京都音博』に呼んでもらって、その頃から岸田くんとちょいちょい飲みに行かしてもらってます」とストレイテナー・ホリエアツシが語れば、「こういう対バンって実は初めてなんですよね?」(佐藤征史)、「だいたい居酒屋での対バンですからね(笑)」(岸田繁)とくるりが応える、といった関係性が生み出す絶妙なグルーヴ感もさることながら、他でもない両バンドの音楽探究精神が最高の音場とともにヴィヴィッドに胸に迫ってくる、珠玉の一夜だった。
■ストレイテナー
01.Ark
02.REMINDER
03.Sunny Suiside
04.BLACK DYED
05.瞬きをしない猫
06.From Noon Till Dawn
07.シンクロ
08.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
09.シンデレラソング
10.BERSERKER TUNE
11.羊の群れは丘を登る
12.Melodic Storm
13.Farewell Dear Deadman
1曲目“Ark”のイントロのギターが、ホリエの歌が、そして4人のサウンドが鳴り響いた瞬間の、視界がバキッと冴え渡るような高揚感! スタンディング+スタンド席で1700人強という会場のキャパシティ以上に、ホールクラスの天井の高さによる広がり感と、どの場所からもステージが近く見えるレイアウト、そしてサウンドのクリアさによって、研ぎ澄まされたテナーのプレイと歌のひとつひとつがよりいっそうリアルに響いてくる。ホリエ自身、「この間geek sleep sheepのライブを観に来たんですけど、すっごい音がタイトで。『やべえ! しっかり演奏しなきゃいかんな』と思って(笑)」とMCで話していたが、“REMINDER”のクリーンなギター・サウンドと強靭なビートが圧巻のエネルギーを生み出していく瞬間、高らかなクラップとともに鳴り渡った“Sunny Suicide”の晴れやかな音像……などなど、4人の音楽的マジックのメカニズムが実に明快に伝わってくるのが嬉しい。
“From Noon Till Dawn”“Melodic Storm”といった爆発力に満ちたキラー・アンセムも盛り込みつつ、会場丸ごと腰から揺さぶるハイブリッド・ファンク“BLACK DYED”や精緻なピアノ・バラード“シンクロ”、ホリエ&大山純のギター/日向秀和のベースライン/ナカヤマシンペイのダイナミックなキメがスリリングかつミステリアスに絡み合う“シンデレラソング”など、これまでテナーが刻んできた音楽的なトライアルと進化をトータル1時間のセットにがっちり盛り込んだような意欲的なアクト。「くるりはすごく音楽的な人たちで、会うたびに『なんてこの人たちは、ロック・バンドでありながら音楽家なんだろう』っていうのを思い知らされるんですけど……」とホリエは話していたが、この日のテナーのライブも、まさに4人の音楽家としての才気と闘争心の結晶そのもののような熱演だった。
そんな名演奏連射状態の中、「去年のストレイテナーのツアーで四国を回ってる時に、くるりも四国を回ってて。僕らが高知でライブ終わって打ち上がってるところに、高松でライブを終えたくるりが合流して、高知の屋台で飲んだっていうのが……来月出るツアーDVDに収録されてます!(笑)」(ホリエ)といったエピソードで満場のフロアが沸いたり、「六本木とロックっつったら、宇崎竜童さんとか内田裕也さんしかイメージなかったんだけど(笑)。俺らと六本木が今後つながっていけばいいなという祈りをこめて……親愛なる六本木・EX THEATERのバーサーカーに捧ぐ!」というシンペイのコールから“BERSERKER TUNE”へ雪崩れ込んだり、といった物語性が加わって、開演時から汗ばむくらいの会場の熱気が刻一刻と高まっていく。「また一緒にやれる日が来ると嬉しいです」というホリエの言葉に導かれてのラスト・ナンバー“Farewell Dear Deadman”が、オーディエンスの情熱をひときわ目映く照らし出していく――すべての音が止み、4人で肩を組んで一礼する姿に、惜しみない拍手と歓声が沸き上がっていった。
■くるり
01.ワンダーフォーゲル
02.BREMEN
03.ロックンロール ハネムーン
04.everybody feels the same
05.loveless
06.花の水鉄砲
07.虹
08.街
09.さよなら春の日
10.東京
先日の『ビクターロック祭り』同様、岸田/佐藤/ファンファンの3人に山本幹宗(G・Key/ex. The Cigavettes)、福田洋子(Dr/BOOM BOOM SATELLITESなどのサポート)を加えた5人編成でオン・ステージしたくるり。「えーみなさん、こんばんは、くるりと申します」という岸田の軽妙な挨拶とともに“ワンダーフォーゲル”の躍動感そのもののイントロが鳴った瞬間、オーディエンスからうわあっと歓喜の声が湧き起こり、高純度な多幸感に満ちたサウンドとメロディがあっという間に会場を満たしていく。そのまま流れ込んだ“BREMEN”の豊潤なアンサンブルとファンファンのトランペットが爽快な開放感を描き出し、そのまま“ロックンロール ハネムーン”“everybody feels the same”へ……という流れの中で、その祝祭感がさらに濃密さを増していくのがわかる。「EX THEATERっていう新しいライブハウスができた記念に、こういうライブを企画していただいて、呼んでいただいて、楽しくライブをやらしていただきながら……幸せいっぱいの気持ちでチューニングしています!」と岸田。「絶対、『エックスシアター』って間違うてる人いるよね?」というMCから、90年代に放送されていたお色気系の日テレ系列深夜番組『EXテレビ』の話に脱線したり、「昔VHSに録ってた頃は、ビデオのラベルに『◯◯地球紀行』とか書いてた」といった思い出話が飛び出したり、といったマイペースな語りが、続けて披露された新曲“loveless”のメロディアスな名曲ぶりと矛盾することなく共存しているのも、くるりならではの磁場と言えよう。
“花の水鉄砲”やシングル『ロックンロール』のカップリング“さよなら春の日”など『アンテナ』期のレア曲もちりばめつつ、「東京には六本木という知名度の高い街があるんですけど。五本木というのを見つけた時に、すごい嬉しかったんですよね。そうやって考えると、この辺には6本くらい木が立ってたんですよ。で、三軒茶屋にはカフェが3つあったんですよ。京都には二軒茶屋っていうところがあるんで、カフェ2つ(笑)」(岸田)というトークを挟んで“虹”のメロディ・ワークで満場の観客を魅了し、“街”の切迫した情感を岸田の絶唱と極上のアンサンブル越しに立ち昇らせ……といった初期からのマスターピース連打で、場内のテンションをさらにぐいぐい上げていく。
「くるりは京都で結成されたバンドなんですけど。大学の時ぐらいに東京出てきて、10年ちょっと住んで、京都に帰ったんですよね。でも、また東京出てきた。二度も上京しました(笑)。どうですか東京? 住み心地は。他から来てる人もいる?」とフロアに語りかける岸田に、「京都!」と観客から声が上がる。「京都から来たの? じゃあ一緒やね、俺らと。最近ちょっとホームシックなんよ、帰ってないから。『帰りてえ!』とか思うんですけど……こんないいライブハウスができたら、また来たいですよね」としみじみ語る岸田。「なので、“東京”っていう曲をやって終わります。ありがとうございました!」。会場一面に巻き起こる拍手の中、これまで何度聴いたかわからないあの“東京”の歌とメロディが、このスペシャルな一日を祝福するようにあたたかく、力強く広がり、観る者すべてを包み込んでいった。
En1.宿はなし(岸田弾き語り)
En2.とんぼ(長渕剛カバー/岸田&ホリエ)
En3.ばらの花
鳴り止まないアンコールの手拍子に応えて、まずは岸田が1人で登場。「世の中にホールやライブハウスは数あれど、ここめっちゃやりやすいんですよ、音響上。音いいやろ?」とオーディエンスに語りかけ、サウンドチェックがてら“宿はなし”をアコギ弾き語りで歌い上げていく。そして、「2人で弾き語りとかしたらもっといい音かな? 飲み友達でも呼んでみようかな?」とホリエを舞台に呼び込むと、驚きと感激の声が会場に渦巻いていく。
ホリエ 「もう飲みたいでしょ?」
岸田 「もう飲みたい! 完全に飲みモードに入ってる(笑)。ホリエくんね、すっごい強いんですよ、こんな顔してて。すぐ倒れそうやもんね?」
ホリエ 「眼鏡を(岸田に)寄せてみましたよ。髪型は寄せられなかったけど(笑)」
そんなやりとりから、「飲みの席で盛り上がった曲がいいかなと思って」と2人でアコギを抱えて披露したのは、なんと長渕剛の“とんぼ”。妙に堂に入ったホリエの歌真似にフロアが沸きまくり、フルコーラス熱く歌い切った2人に惜しみない拍手が降り注ぐ。ホリエを送り出してメンバーを迎え入れ、「みなさん、ほんとにありがとうございました! くるりのライブにも、ストレイテナーのライブにも、EX THEATERにも足を運んでください」という言葉とともに響かせた正真正銘最後の曲は“ばらの花”。一切の淀みも無駄もない歌と音が、至上のひとときのエンディングをこの上なく美しく飾っていた。
なお、今回のライブの模様はCS放送「テレ朝チャンネル1」で今夏放送予定とのことなのでお楽しみに。あと、ホリエがMCで触れていたストレイテナーのライブDVD『ETERNAL ROCK BAND -21st CENTURY ROCK BAND TOUR 2013-』は3月19日発売なので、そちらもお楽しみに。(高橋智樹)
くるり×ストレイテナー @ EX THEATER ROPPONGI
2014.02.26