元STPのスコット・ウェイランドの死から2年。48年の生涯を本人の言葉と共に振り返る

元STPのスコット・ウェイランドの死から2年。48年の生涯を本人の言葉と共に振り返る

2015年12月3日に急逝した元ストーン・テンプル・パイロッツのスコット・ウェイランド。その波乱に富んだ生き様と薬物に苦しめられた半生を語った様々な発言が、命日を迎え改めて注目されている。

スコット・ウェイランドは2年前、自身のバンド、ザ・ワイルドアバウツを率いてのツアー中にツアー・バスの中で死亡していたところを発見された。その後の検視結果ではコカインとアルコール、幻覚剤(MDMA)を服用していることが明らかになり、死因は薬物とアルコールの過剰摂取であると発表された。

スコットは80年代にロバート・ディレオと出会いバンドを結成。その後ギタリストにロバートの兄であるディーン・ディレオ、ドラマーにエリック・クレッツを迎え、のちのストーン・テンプル・パイロッツを結成した。

Stone Temple Pilots - Creep

1992年のメジャー・デビュー・アルバム『Core』、1994年の2ndアルバム『Purple』で一躍オルタナティヴ・ロックの一翼を担うバンドとして頭角を現したが、当初からスコットの素行のためツアーやレコーディングが頓挫することも度々あったという。

2003年にストーン・テンプル・パイロッツがいったん解散すると、ガンズ・アンド・ローゼズを脱退していたスラッシュ、ダフ・マッケイガン、マット・ソーラム、かつてのバンド仲間のデイヴ・カシュナーと共にスーパーグループ、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーを結成。

『コントラバンド』、『リベルタド』とアルバム2枚をリリースするが、ストーン・テンプル・パイロッツの再結成の機運が高まってくると、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーの活動は暗礁に乗り上げることとなった。

Velvet Revolver - Dirty Little Thing

ストーン・テンプル・パイロッツは2008年から再結成ツアーを催行するが、やがてスコットとバンドとの関係が思わしくなりなり、スコットは2013年にバンドを離脱。その後、バンド側はリンキン・パークのチェスター・ベニントンを後任ボーカルとして迎えたことを明らかにし、ツアーにも乗り出すことになった。その一方でスコットは自身のバンド、ザ・ワイルドアバウツを結成し、積極的なツアー活動を続ける中アルバムもリリースしていた。

Scott Weiland And The Wildabouts - Way She Moves/Hotel Rio

今回紹介するのは2005年にヴェルヴェット・リヴォルヴァーのボーカルとして活動していた頃、「Entertainment Weekly」がスコットに対して行った最後のインタビューだ。

この時期には薬物を断っていたとのことで、それまでの自身の薬物との関係性などが客観的に語られている。他のインタビューと同様薬物に関する話題が多く述べられているが、長年に渡りアルコールや薬物を摂取していたスコットにとって、その使用歴や自身の薬物に対する考え方を語らずして自身の半生を振り返ることができない、という事実が伺える内容となっている。

Stone Temple Pilots - Interstate Love Song

スコットはまず自分の生い立ちを詳細に語っているが、両親が離婚したため、実の父親と別離したことが大きな心の傷となったことを明かしている。特に母親の再婚相手は実父とはまったく対照的な、勤勉な会社人間で、サーファーでロック好き、そしてボヘミアン気質を持っていた実父への憧れがより一層強くなったのだと振り返っている。

その後、家族は義父の転勤に伴って、スコットが生まれ育ったサンフランシスコ郊外からオハイオ州クリーブランドに移住。その後は夏休みの間だけ実父とカリフォルニアで過ごしていたというが、休みが終わって飛行機でオハイオへ帰る時の悲痛な気持ちを次のように説明している。

クリーブランドに戻ると、もう数週間は心がぼろぼろでね。9年間ずっとそうだったんだよ。期待と別れ。俺の夏はいつもそういうもんだったんだ。


スコットはその後、家族がカリフォルニア州のオレンジ郡に引っ越した高校1年生の時に初めてのバンドを結成。以前より機会を見つけては酒を盗み出し酩酊していたというが、このバンド活動を始めた頃に初めてコカインを体験したことを明らかにしている。バンド活動も旺盛で、高校生ながら週末にはロサンゼルスまで遠征し、ハリウッド界隈のアンダーグラウンドなクラブへの出演もこなしていたという。

しかし両親からそうした生活態度を咎められ、自室に隠してあった大麻やコカイン吸入に使う手鏡、カミソリなどを発見されたのだとか。両親からの通報を受けた警官が学校にいたスコットの身柄を拘束し、そのままリハビリ施設へ放り込まれるという経験もあったのだという。

Stone Temple Pilots - Vasoline

その後、20代に入ってからヘロインに手を出し始めたというスコットは、大麻は思考が活発になってしまうためまったく息抜きにならないと説明。どうして自分がここまでヘロインに惹かれてしまうのかを次のように語っている。

ヘロインとくると、どうしてもそそられるものがあったんだ。俺の音楽やアーティストとしてのヒーローはみんなヘロインと繋がってたからね。ウィリアム・バロウズ、キース・リチャーズ、グラム・パーソンズ、それからジャズの名手、チャーリー・パーカーまで、誰もがね。

そういう音楽の流れるような音を聴けば、その音からヘロインを聴き取れるんだよ。決定的に惹かれるものが俺にはあったんだね。この薬物にだけどうしてこれだけの力があって、音楽やアートや人生にこれだけ影響をもたらして、これほど美しくて、でもそれと同時にこれほど闇に満ちて破滅的なのはどうしてなんだろうって不思議に思ったもんだよ。

その美しさと闇、このふたつの要素が俺にとっての誘惑になったんだ。俺はそこに惹かれていた。というのは、そういう拮抗はずっと俺の中にあったものだったから。大いなる二元対立と俺は呼んでるんだけどね。


Stone Temple Pilots - Plush

その後ヘロインの摂取はますます増えていき、やがて注射を使うようになった時のことについても次のように振り返る。

一旦打ち始めるようになったら、自分の大きな進路を決めてしまったってことを自覚したんだ。つまり、もうこの先はまともな生活を維持することはできないってね。

自分の人生が、ビルの屋上の縁にかろうじて手をかけてぶら下がってる友だちみたいな存在になるんだ。自分はその友だちの手を摑んでるんだけど、友だちの手はどんどん抜けていく。

どんどん抜けていって、こいつはもう助からないと分かるんだ。そしてその友だちっていうのは、実は自分自身のことなんだよ。


スコットは1995年にクラック・コカイン(コカインの塊)の所持で初めて逮捕されているが、その後保釈されるとヘロインの禁断症状に耐えられず、留置所に自分を迎えに来た妻の車から逃走。そのまま売人のもとへ走りロサンゼルスのシャトー・モーマント・ホテルに直行したスコットは、コートニー・ラヴの隣の部屋を割り当てられたのだと以下のように明かす。

コートニー・ラヴの隣の部屋になったんだよ。それで一緒に打ちっぱなしになってたんだ。ほとんどの間、コートニーはパンツ1枚で過ごしてたよ。けれども、俺たちの間では何も起きやしなかったんだ。

ハイになってくると、性的な雰囲気とか気配はなくなっていくものさ。少なくとも、そっち方面はあんまり重要なことじゃなくなってくるんだよね。一番重要なのはクスリってことさ。

ただ、コートニーと一緒にハイになってると、なんだかリアリティ番組を目の前で観てるような感じではあったよ。それがすごく楽しかったな。でも、俺についていえば、現実を避けるために常にキメてる状態だった。

ふたりでひと月くらい泊まってたんじゃないかな。間違いなくロックンロール的な瞬間を何度か経験したと言えるね。


Stone Temple Pilots - Big Bang Baby

スコットはなぜこんなにも薬物に翻弄されたのかーー。インタビューの最後で、その理由を以下のように述べている。

俺の中にはある暗い場所があるんだ。それは孤独な場所なんだよ。そこは完全に恥と自己嫌悪に満ちた場所で、俺がまったくひとりぼっちだと感じさせられてしまう場所さ。

というのも、自分が感じる痛み、孤独と悲しさの原因を作っているのは俺自身だからなんだ。俺はそういう気持ちに塗れてしかるべき存在なんだと思うんだよ。

それがどういうとこにまで遡るのかっていうのは自分で分かってるんだ。俺の両親が離婚したことや、遺棄されたように感じたことなんかが原因なんだってね。

それと罪の意識や劣等感からもくることなんだ。そして、そう感じるように自分で自分を仕向けてしまったという気持ちのせいで、それが自己増長されていく。その気持ちがそのまま勝手に生き始めてしまうんだよ。


なお、ストーン・テンプル・パイロッツは先日、スコット・ウェイランドの後任だった故チェスター・ベニントンに代わる新シンガーの加入を発表。「Xファクター」出身のジェフ・グートをボーカルに迎えての初めての新曲となる“Meadow”を公開した。新体制でのニュー・アルバムのリリースは来春を予定している。

Stone Temple Pilots - Meadow
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