狂った世界の真ん中で、周囲に潜む異常な雰囲気を全身の毛穴で感じながら、それでも音楽によって描ける「信じるべき美しいもの」とは何であるか。
それをたった3曲で、神々しいくらい泥臭く正直に描いているのが米津玄師の最新シングル『馬と鹿』に収録されている”馬と鹿””海の幽霊””でしょましょ”の3曲である。
映画『天気の子』や、トム・ヨークのアルバム『アニマ』や、ビリー・アイリッシュの一挙一動などを通して「今、表現とはこういうものであって欲しいんだ」と最近、感じたことの全てがこの3曲の中にも、とても簡潔に、それでいて巨大なエネルギーとスケール感で描かれている。
米津玄師というアーティストのここにきてのさらなる覚醒、時代との恐ろしいくらいのシンクロを感じさせる、驚くべき作品だ。(古河晋)