04 Limited Sazabysが1年前の「AIR JAM」を経て掴んだ令和ならではのパンクな闘い方について

04 Limited Sazabysが1年前の「AIR JAM」を経て掴んだ令和ならではのパンクな闘い方について
いよいよ今週末9月29日(日)、04 Limited Sazabysにとって最大規模のワンマンライブ「YON EXPO」がさいたまスーパーアリーナで開催される。ただデカい会場でライブやります、というだけではない「お祭り」になりそうで期待はますます募るばかりなのだが、このイベントに「EXPO(=博覧会)」という名前を付けるところが改めてフォーリミらしいし、ここから先の彼らを象徴していると思う。彼らが作るのはいつだって「場所」、それもちゃんと意味と物語をもった「居場所」であった。彼らは何もないところから自らの手で荒れ地を開拓し、土地を耕し、そこに人が集まる「場所」を作ってきた。だから彼らのファンクラブの名前は「YON TOWN」というのだし、いちばん新しいアルバムは『SOIL』――「土壌」と名付けられたのだ。

2016年に彼ら主催のロックフェス「YON FES」がスタートしてからすでに4年が過ぎた。今やすっかり定着したこのフェスも、もとはといえばフォーリミが自分たちの「居場所」をちゃんと形にしたいという思いから始まったものだった。会場の愛知県・モリコロパーク(愛・地球博記念公園)はGEN(B・Vo)が学生時代からよく知っていた場所で、つまりそこにはちゃんと彼らなりのバックグラウンドがあった。そして、声をかけたバンドの中心にいたのは、彼らとしのぎを削ってきた同世代たちだった。ジャンルを超えて集ったメンツが、そのままフォーリミのメッセージになっていたし、そのメンツがいなければ「YON FES」は絶対に始まらなかった。

バンド主催のフェスという意味で、「YON FES」のルーツにあるのは直接的には10-FEETの「京都大作戦」であり、さらに遡ればHi-STANDARDの「AIR JAM」である。いや、ルーツというよりも回答というべきか。「AIR JAM」をリアルタイムで体験していない世代からの「俺らは俺らでやってるよ」という「AIR JAM」へのアンサー。フォーリミにとっての「YON FES」がそういうものなのだと思えたのは、GENがハイスタと同じステージで彼らを含めた諸先輩方を、最大限のリスペクトとガチンコの闘争心を込めて「オッサン」呼ばわりした、あの日があったからだ。

今から1年前の2018年9月9日、「AIR JAM 2018」のステージに04 Limited Sazabysは立った。BRAHMANSLANGマキシマム ザ ホルモンHEY-SMITH、10-FEET……名だたるバンドが並ぶなか、彼らに与えられたのはトリを務めるハイスタのひとつ前という「場所」だった。はっきり言って違和感はあった。それはそうだろうし、ハイスタと「AIR JAM」のヒストリーを前にして、フォーリミのことをぽっと出のガキンチョのように思う人たちもいたことだろう。しかし、そのガキンチョにこの場所を託す、それは「AIR JAM」が掲げる「時代も世代も超える」というテーマの体現であり、そしてこれこそがハイスタからのメッセージ、フォーリミが「AIR JAM」に出る意味だった。

当日そこでどんなライブが繰り広げられたかはライブレポートの類を検索して読んでもらえればと思うが、フォーリミはのっけからケンカ腰でその大舞台に挑んだ。半分は自分たちを奮い立たせるためのファイティングポーズでもあっただろうが、半分はきっと本音だったはずだ。「夢みたいだけど現実」――GENはハイスタ世代のオーディエンスを前にそう口にして、音楽への愛と音楽を追いかけていく苦しみを歌った“monolith”を鳴らした。「夢の舞台」だけでも「夢のように嬉しい」だけでもなく、これはまぎれもなく「現実」の延長なのだと。だから本気で闘わなければいけないし、ハイスタからのメッセージに全力で応えなければいけない。その思いが溢れたのが、「いつまでもオッサンたちに任せてられない」という言葉だった。そして――勝ち負けどうこうの話ではないが、彼らは「AIR JAM」の歴史に確かに名を刻んだ。ハイスタのステージにGENが飛び入りして“MY FIRST KISS”を歌った瞬間、確かにバトンはつながったのだ。

最初に書いたとおり、フォーリミの歴史とは自分たちで自分たちの「居場所」を勝ち取ってきた歴史だ。なぜ彼らがそうしなければならなかったかといえば、どこにもそんなものはなかったからだ。ジャンル的にも世代的にもどこかひとつの場所に属することができないまま、どこにいても居心地の悪さを感じながら、彼らは自分たちのやりかたで闘い続けてきた。その方法論はハイスタがここ日本でゼロからシーンを築き上げてきた物語とは色も形もキャラも違うが、間違いなく重なる部分はある。ジャンルも出揃い、音楽の聴き方も大きく変わってきているこの時代、世代だからこそのパンク、それが04 Limited Sazabysなのだ。「AIR JAM」での美しいリレーは、「俺らは俺らでやってるよ」というフォーリミの思いに対するハイスタからの「もっとやれ」という手荒い祝福だったのだと、今にして思う。

9月4日、フォーリミのニューシングル『SEED』は、前代未聞の「缶」というフォーマットでリリースされた。缶詰のなかにはダウンロードコードやグッズが入っている。CDやDVDは缶に付属する特典という扱いだ。2016年にハイスタがシングル『ANOTHER STARTING LINE』をゲリラリリースしたときも驚いたが、ある意味で『SEED』のサプライズはその先を行っている。「どんな音楽を届けるのか」というだけではない、「どうやって音楽を届けるのか」という新たなフェーズに、フォーリミの闘いは進んでいる。まだまだ道半ば、『SEED』のタイトルどおり「種まき」の段階かもしれないが、「My HERO」から受け継いだ強い意志とともに04 Limited Sazabysは進む。新世代のヒーロー、その闘いはこれからもっとおもしろくてタフなものになっていく。(小川智宏)
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