やっぱり、俺たちはライブやってなんぼみたいなところがあるので。
そこを待ってる間にどう戦うか、っていうことがいちばん大事なんじゃないかな、今はね、って
現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』8月号に[Alexandros]が登場!
初のリモートアルバム『Bedroom Joule』に込めたもの、そして、「ロックバンドとして過ごす今」を語る
インタビュー=小柳大輔
このリモート期間に「楽曲」を作り、リリースしたアーティストはたくさんいたが、「アルバム」をまるごと、作り上げてしまったアーティストを僕は知らない。そんな無謀なことを考え、そんなチャレンジを見事にやりきってしまうバンドを、僕は他に知らない。そう、[Alexandros]を除いて。
トータル34分26秒の、豊かで美しくて、たくさんの気づきがあって、そして全編がたまらなくロマンチックな空気で覆われた音楽的経験、あまりに素晴らしい時間。[Alexandros]が今、こうして僕たちに届けてくれた8曲のアルバム『Bedroom Joule』は、今年デビュー10年を迎えた3人の、それぞれに研磨してきた経験値と発想力、いかなる苦境においても、常に前を向き、「今、自分たちにやれること」を考え、ベストのパフォーマンスをし続けることを絶対に諦めない、割り切らない――言ってしまえば、[Alexandros]の信念とでも呼ぶべき、力強いファイティングスタイルが生み出した、最高級の結晶である。“Starrrrrrr”、“Run Away”、“月色ホライズン”、“Adventure”といった代表曲が大胆にジャンルごと換骨奪胎され、日々、ささくれ立つ心を穏やかに癒やし救うように歌われていく。メロディの繊細さ、その美しさがすうっと静かに心に刻まれる。優しく爪弾かれるアコースティックギターの響き、自宅の空気の中にひとつひとつ置かれていくような緩やかなビート。言葉の輪郭を丁寧になぞりながら、「意味」と「メッセージ」をいつも以上に、近く易しく伝えてくれる歌詞、そして川上洋平が口ずさむ温かな体温に満ちた歌声――。
それぞれがアレンジを担当し、大切に、しかしこの逆境すら楽しみながら作り上げた8曲の結晶は、普段はその孤高の獰猛さによって固くコーティングされている「本質」を知るに最高の料理である。特に、8曲目に収められた新曲“rooftop”で歌われる淡く、しかし確かに宣言される希望の一節――「今はまだ、離れたまま心を描き合うけど」「また、必ず会おう。その瞬間を忘れないでいよう」――は、現代を代表するロックバンド・[Alexandros]の、現実主義的でありながら、だからこそ歌えるロマンチシズムを象徴した名曲だと思う。今、欲しかったのはこの言葉だと、僕たちをして心を震わせる、最高のメッセージである。
そんな3人と、「今はまだ、離れたまま」、リモートでじっくりと話をさせてもらった。美しく躍動する3人に再び会える日も、きっとそう遠くはないだろう。(小栁大輔)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年8月号より抜粋)
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※記事初出時、内容に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。