現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』8月号にSEKAI NO OWARIが登場!俺の作りたいものはみんながいいと思ってくれるもの。
そういうイコールの方程式が成り立ってる
11年目の革新――ニューシングル『umbrella / Dropout』を語る
インタビュー=小柳大輔 撮影=YAMA 山添雄彦
デビュー10周年を迎え、11年目の季節を過ごしているセカオワから、最高のシングルが届けられた。
『umbrella / Dropout』。表題曲“umbrella”はメンバー自ら、「シングルとしては初めて」と語る、マイナー調で流麗に紡がれたバラードである。音像が幾重にも折り重なった豪奢なアレンジ、情感の粋が刻まれたメロディ、「置き去られた傘」と「あなたが去った世界」を重ね、Fukaseが描き上げた刹那の世界観。すべてをトータルで受け止めた実感として、これ以上の注文のしようがない大作バラードである。これもまた、稀有なる音楽家集団・SEKAI NO OWARIのひとつの本質だと僕は思う。
セカオワとはファンタジーである、という言い方をいまさら否定するつもりもないし、実際そうである。ただ、このシングルを通して、僕たちがあらためて気づくべきことがあるとして、それは「セカオワはなぜ、10年間もの長きにわたって、僕たちを何度も驚かせ、そしてなぜこれほどまでに愛されてこれたのか」という、その存在の根源的な理由について、なのだと思う。セカオワはファンタジーであり、世界観であり、巨大なビジョンを掲げ、実現し続ける革命家である以前に、誰より強く、普遍的な才能を持ち、それを大切に磨き上げてきた、圧倒的に優れたポップミュージシャンだった。言ってしまえば、ミュージシャンとしての裸の腕っぷしのようなもの、いかに優れたポップソングを作り続けることができるのかというシンプルな命題に応え続ける腕力と探究心――そんな、「当たり前」の強さを、思い知らされるような気がする。そして、セカオワポップをまさに無二の存在感で染め上げ、怖いくらいに澄み切った美しさを見せてくれるFukaseの歌声――。“umbrella”に刻まれているものは、セカオワがセカオワとして生きてきたこの10年の到達点にして、そもそもその物語の原点にあったものの尊さを、今あらためて教えてくれる。歌謡曲/ポップミュージックの奥深さそのもののような名曲だと思う。
続く“Dropout”もまた、ブライトなセカオワ節が溢れるポップソングだが、描かれている言葉は鋭く衝動的で、Fukaseの影と心象風景がどろりと注ぎ込まれた、これぞセカオワ楽曲である。Saoriが作詞作曲をした“周波数”では、人が生きることの希望がまっすぐに衒いなく描かれている。ここにもまたセカオワの「信念」が刻まれている。
11年目のセカオワ。円熟しながらピュアに生まれ変わっていく不可思議なサイクルを思わせる彼らは、ここからまた新たな10年を生きていく。今、この世界で呼吸をしながら思うことを、4人に語ってもらった。(小栁大輔)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年8月号より抜粋)
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