キッスのポール・スタンレー、ソウル・ミュージックへの深い愛を捧げた『ナウ・アンド・ゼン』リリース――その「意表を突いたマジック」から目が離せない!

キッスのポール・スタンレー、ソウル・ミュージックへの深い愛を捧げた『ナウ・アンド・ゼン』リリース――その「意表を突いたマジック」から目が離せない! - 『rockin'on』2021年4月号より『rockin'on』2021年4月号より

「あの時代の偉大な名曲たちは、多くの人々にとって魔法の薬となり得るもの。そこで僕は、自分たちにも使えそうな魔法を見つけようと、あの時代に立ち返ったんだ」。言葉の主はキッスのポール・スタンレーだが、彼が語っているのはロックンロールではなく往年のソウル・ミュージックのこと。彼が2015年に始動させたこのプロジェクトの看板に偽りはない。

2018年1月には来日公演も行ない、その分野に精通するリスナーでなくとも馴染みがあるはずの名曲のカバーのみによって構成されたステージを披露している彼らだが、それから3年を経てついにデビュー・アルバムが登場。しかもそこにはテンプテーションズやミラクルズ、フォー・トップスらの名曲群のみならず、このプロジェクトによる新たなオリジナル曲までちりばめられている。

キッスが1stアルバムを発表したのは1974年2月のこと。引退宣言やその撤回などを含む紆余曲折を経ながら、長きにわたりエンターテイニングなロックを象徴する存在であり続けてきた彼らだが、2019年にはついに最終ツアーが開幕。新型コロナ禍の影響により2020年3月をもって同ツアーも中断を余儀なくされ、元々は2021年7月に設定されていた終着点がどれくらい先延ばしになるのかもわからないままの状況が続いている。そんな中でのポールのこうした動きは、セカンド・キャリアの円滑なスタートを目論んでのものに見えなくもない。が、何よりも重要なのは、彼の動機が、ハードなロックンロールに洗礼を受ける以前に彼自身に音楽への目覚めをもたらしたクラシックなソウル・ミュージックに対する愛と敬意だということだろう。

ポールは1999年、自ら志願し、オーディションを受ける形で『オペラ座の怪人』のファントム役に選ばれ、ミュージカル・デビューを果たしている。21世紀に入ってからは本格的に絵画に取り組み、個展も開催。さらには2冊の自叙伝もベストセラーになっている。そして、去る1月で69歳になった彼の新たなトライアルが、このソウル・ステーションなのである。

これまでもキッスでさまざまなマジックを引き起こし、世界に夢を与え続けてきた彼が、この先どんな魔法を披露してくれるのかを楽しみにしていたいところだ。(増田勇一)



ポール・スタンレーズ・ソウル・ステーションの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


キッスのポール・スタンレー、ソウル・ミュージックへの深い愛を捧げた『ナウ・アンド・ゼン』リリース――その「意表を突いたマジック」から目が離せない! - 『rockin'on』2021年4月号『rockin'on』2021年4月号
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