エレファントカシマシ、ここに極まる。
灼熱と冷徹のロックアクト、「日比谷野外大音楽堂 2022」完全レポート!
文=高橋智樹 撮影=岡田貴之
《過ぎゆく日々よ。いかり、喜び、死にゆくのか。/俺は。》……冒頭から鳴り渡った“過ぎゆく日々”の宮本浩次の凄絶な歌声に、日比谷野音の客席の期待感はびりびり音がしそうなほどの緊迫感へと塗り替えられていく。が、その歌と演奏のひとつひとつを全身に浴びている満場のオーディエンスは、その緊迫感を戸惑いではなく、さらなる高揚感をもって謳歌しているのがわかる。渾身のエレファントカシマシ、全身全霊の熱演と絶唱。来年デビュー35周年を迎えるバンドの足跡が、それこそデビュー当初の張り詰めた佇まいを彷彿とさせる空気感とともに、2022年の「今」にあらためて響く――そんな珠玉のライブ空間だった。
2022年9月25日、東京・日比谷野外大音楽堂。台風一過の秋晴れの空の下、エレファントカシマシの単独公演「エレファントカシマシ 日比谷野外大音楽堂 2022」は開催された。エレファントカシマシのライブとしては、今年1月に日本武道館で行われた「新春ライブ 2022」以来8ヶ月ぶり。お馴染み「エレカシ野音」が開催されるのは、2020年10月以来約2年ぶりのこととなる。
ご存知の通り、デビュー間もない1990年から2020年まで、エレファントカシマシは毎年ここ日比谷野外大音楽堂のステージに立ってきた。レーベル契約が途絶えていた1995年も、冨永義之の慢性硬膜下血腫の手術を経た2006年も、さらには2012年、宮本自身の急性感音難聴でバンドの公演が中止になった時にも、宮本はひとり舞台に立って弾き語り演奏を敢行(最後はメンバーも登場)……という形で続けてきた「エレカシ野音」。コロナ禍でライブ開催すらままならなかった2020年にも、ソーシャルディスタンス&リアルタイム配信の形で実施されてきた。
しかし、2021年は10月から宮本がソロツアー「TOUR 2021〜2022 日本全国縦横無尽」で47都道府県を駆け巡っていたこともあり、恒例の「エレカシ野音」のみならず、エレファントカシマシのライブそのものが行われなかった。それはそのまま、宮本が自身のソロの表現にどれだけ全身全霊を傾けてきたかを物語るファクターである。が、だからこそ、「縦横無尽完結編 on birthday」(6月11日・12日/国立代々木競技場第一体育館)でソロツアーが大団円を迎えたあと、「エレファントカシマシ・宮本浩次」がいかなる歌の地平を立ち上らせるのか、が重要なポイントだった。そして――この日の野音に轟いていたのは、宮本自身が生み出してきたエレファントカシマシという音楽の隅々にまで新たな血潮と衝動とダイナミズムを吹き込もうとするかのような、圧巻の歌の絶景だった。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年12月号より抜粋)