音楽はときに本からは得られない文学性を感じさせてくれる。
音楽はときに服からは得られないファッション性を纏わせてくれる。
音楽はときに広告からは得られない情報性を与えてくれる。
音楽はときに学問からは得られない知性を与えてくれる。
音楽がこのように音楽であることを超えた力を複合的に持ちうるのはなぜか。
多分、風のようにどこかから吹いてきて、時代を反射しては、どこかへ吹き去っていくものだからだ。
“多分、風。”は、まさにそんな音楽の持ちうる力の多面性を体現した音楽だ。
大衆的ともマニアックとも、懐古的とも未来的とも、アナログ感ともデジタル感とも、快楽的ともストイックとも割りきれない。
まさに風のようにどこにも定住しないスピード感とざらつきと体温とまばゆさを持つこの“多分、風。”は、どこまでもロジカルな作業を積み重ねることで、有機的に音楽の可能性を開花させ続けるという、サカナクションにしかできないことの極みの1曲である。(古河)
サカナクション『多分、風。』は「まさに、風。」
2016.10.23 00:07