Chilli Beans.の新曲“I like you”は、「愛」を伝えるのではなく自分の「好き」を肯定するための至極のラブソングだ

Chilli Beans.の新曲“I like you”は、「愛」を伝えるのではなく自分の「好き」を肯定するための至極のラブソングだ
2nd EPのタイトル『Daydream』が象徴するように、Chilli Beans.の楽曲は白昼夢に誘われるような、幻想の世界に迷い込んだような聴き心地を持っている。
実際に《夢》や《dream》といった歌詞もいくつかの楽曲で散見されるが、10月11日に配信リリースされた新曲“I like you”(新ドラマ 『時をかけるな、恋人たち』主題歌)もまさに《幻覚に目が冷めたらdream》というフレーズで幕を開ける。

うっすらとコーラスがかったギターのアルペジオと琴線を丁寧になぞるように響くベース、BPM100ちょっとのリズムの上を軽やかにダンスするMoto(Vo)の歌声が、《他の人なんかもう知らないよ》という言葉の通りに《僕》と《君》だけの世界を浮き彫りにする。


叶わない恋を描いた彼女たちの代表曲“lemonade”では、ポップなサウンドに乗せて好意を寄せる相手への思いを《好きじゃないよ 君なんて》と逆説的に表現することで恋愛の甘酸っぱさを極上のタッチで描いてみせたが、今作では《love you baby》と愛を伝えつつも、最終的には《I liked your days》と主観的に他者への「愛」を表現するのではなく内省的な思いを俯瞰して、「君のことを好きな自分」を優しく肯定する。

同様に、《だって辛いよ嘘つき》と叶わない恋への焦燥や不安、不満を赤裸々に綴った“lemonade”とは対照的に、今作では《君の嘘が好きだよ》《どんな嘘にも綺麗に溺れるよ》と言い切ってみせることで、この曲はラブソングという体を成しつつも自分へのエールとなって日常を彩ってくれるのだ。

12月には“I like you”を収録したニューアルバム『『Welcome to My Castle』のリリース、そして来年2月の日本武道館公演と2023年下半期、Chilli Beansはこれまで以上の速度で駆け抜けていくのだろうが、変わらずマイペースにブレない音楽を届けてくれるチリビの音楽は、追いかけるというよりはいつだって同じ歩幅で我々の隣を歩いてくれる。(橋本創)


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