この日が来るのをどれだけ待ったことか。
本来なら2020年3月から9年ぶりの復活ツアーを行うはずだったレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。ロックダウンを経て、ようやく11年ぶりにツアーを開始した。NYでは現在マジソン・スクエア・ガーデンで5日間のライブを行なっている最中だが、その2日目にあたる8月9日のライブを観て来た!
もうなんと言うか、レイジそのままにして、完璧で、2022年に最強のロックを鳴らしている。
バンドが映像をいくつかインスタにポストしている。
いやあ11年ぶりだね。みんな待っててくれてありがとう、マジソン・スクエアで5日もできて嬉しいよ、みたいな余計な発言は一切なく。
赤く会場が照らされる中で、ザックが、「チェック1、2」と言った後、「これはパブリック・サービス・アナウンスメントです」と言って、「We are Rage Against The Machine from Los Angeles, California」と言ったら、もうそのまま19曲緩くなる瞬間など1秒もなくひたすら破壊的な爆弾を落とし続けるようなライブを行なった。
唯一ザックが、ツアーが開始してすぐに足を痛め、現在ギブスをしているのでずっと座ってライブを行なっているのが、以前とは違うところだが、そんなことまるで感じさせないどころか今のシーンを見渡してもこんなすごいフロントマンっているか?と思ってしまうくらい、むしろザックのフロントマンとしてのカリスマ性に感激するばかりの内容だった。
レイジがなぜ2022年に最強のロックを鳴らしているかというと、もうアメリカの情勢が最悪で、レイジがいまだにそれと闘う最強の曲を持っているからだ。
彼らの「バンドとは政治活動であるという」目的が最初から明確である。もちろん同じような目標を掲げているバンドは他にもいると思うけど、マジソンスクエアガーデンを5日間=約10万人集められるくらいメジャーなバンドもそういないのではないか。なのでどのバンドよりもそのインパクが強烈。
そして、30年前に作ったその曲がその当時も、そして今も、ほとんど何も変えないままで、その目的を果たすために、有効である完成度の高さであること。
しかも、期せずして、2022年にアメリカで、レイジが30年前に問題視していたことが、再び大きな問題となっている。
この全てが合わさって、レイジが2022年に最強のロックを鳴らしている。
元々は、米大統領選挙戦の最中に行われるはずで、しかも、その当時アメリカとメキシコの国境線における前大統領の政策が最悪で、その禍中にあったテキサス州エルパソでツアーは開始するはずだった。私もこれは絶対に観逃せないと思ってエルパソのチケットも、飛行機もホテルも抑えていたのに、ロックダウンでキャンセルされて、おかげでトラウマになったくらいだった。だから、この日のライブもギリギリまでチケットを買わなかったし、本当に観るまで行われるか分からないと思うようにしていた。
しかし、ロックダウンの最中に米大統領選も終わり、前大統領が再選しなかったため、レイジのツアーが再開しても怒りはどこに向けられるんだろう、微妙すぎる….とも思っていた。が、心配無用だったというか、アメリカは想像以上に最悪な場所になっていて、むしろこれ以上ないタイミングでの復活となってしまった。
引き続き移民から、警察による黒人への暴力、マイノリティや、最近では女性の権利など、レイジがこれまでも闘ってきたことが、悲しいかな今のアメリカにおいても最大の問題となっていて、彼らが30年前に作った曲が、そのままでいまだ最も有効であることをこのライブが証明してしまっているのだ。
ザックもバンドも、だから始まった瞬間からノスタルジアの入る余地もないライブを展開し、ひたすら今の問題と闘っているので、完全に2022年のバンドとして最強なのだ。
最後に笑顔とガッツボーズを観せる瞬間だけ、このライブの意義とそれを実感している姿が垣間見られる。
熱狂のライブの後に、皮肉とも、少しの希望とも取れる、ボビー・マクファーリンの”Don’t Worry, Be Happy”を流すところまで完璧だ。
このライブについては、次号ロッキング・オンのコレポンのページで書く予定です。
以下セットリスト。
1. Bombtrack
2. People of the Sun
3. Bulls on Parade
4. Bullet in the Head
5. Revolver
6. Testify
7. Tire Me
8. Take the Power Back
9. Guerrilla Radio
10. Vietnow
11. Know Your Enemy
12. Calm Like a Bomb
13. Sleep Now in the Fire
14. Born of a Broken Man
15. War Within a Breath
16. The Ghost of Tom Joad
17. Freedom
18. Township Rebellion
19. Killing in the Name
あ、と言っていたら、レイジがNYのライブが終わった後に、UK,ヨーロッパツアーに行く予定だったのをキャンセルと発表。ザックが足を怪我しているため、このスケジュールで回るには無理があり、医者に家に帰ってリハビリしろと言われたらしい。これは致し方ないけど、ここまで待ったファンがかわいそうすぎる。問題はコロナだけじゃなかった。ザックお大事に! 早く治してください。
バンドは、来年からツアーを再開して、4月の頭に終わる予定なので、そのまま当初出る予定だったコーチェラに出るのではないかと思うけど。このご時世なので、それまでに世界がどうなっているのか分からない。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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