マイケル・ムーアの新作”Capitalism: A Love Story" がトロント映画祭で上映され、今週全米で公開される。批評家からは絶賛されている。リーマン・ブラザーズが倒産する半年くらい前からこの映画の制作に取りかかっていたというムーア。映画の今回タイミングはこれ以上ないくらいに完璧。イギー・ポップが映画のために新録したという”LOUIE LOUIE"に始まるこの作品。「社会主義社会は崩壊し、資本主義者達が心を破壊する。すべては金のせい。だからLOUIE LOUIEと歌うしかないのさ」というこの映画のテーマそのままという歌詞に乗せて、銀行強盗を映し出す防犯カメラの映像に始まるこの作品は、ムーアの資本主義というシステムがもたらした不公平に対する怒りと苛立が原動力となって作られている。トロントで行われた記者会見でも、「僕らは、すでに21世紀を生きているんだ。社会主義でも、資本主義でもない、もっと今の時代に合ったシステムを思い付いてもいい時期にきているのではないか。人間ってもっと賢い生き物なのではなかったのか?」と力説していた。しかし、その答えが簡単には見付からないように、この作品にも解答らしきものはない。ムーアその事実をいつものように笑いで描いているが、しかし多くの喜劇がそうであるように、ここに描かれているのは本当は悲劇である。
映画は、彼のスタッフが見付けたというフランクリン・D・ルーズベルト大統領が亡くなる1年前に残したなんと未公開映像で締めくくられる。これがじーんと感動的だ。未来の市民(現代のアメリカ国民)への遺言状みたいなものなのだ。そして、ウッディ・ガスリーの”JESUS CHRIST" のカバーが最後に流れる。キリストは貧しい人々を助けなかった強欲な人間は地獄に落ちると言ったはず、といのも映画のテーマのひとつなのだ。そして、これのどこが”ラブ・ストーリー”なのか?それは、人間の金への愛を描いたものだからだ。
ちなみに、ムーアは記者会見で、現在のオバマについて訊かれ、彼に同情すると言っていた。彼をサポートした何百万人の人達は一体どこへ行ってしまったのか?と。彼は今ひとりで戦っている。しかもその孤独な体制が彼が元々掲げていた理想を妥協させていると。次はオバマについての作品を作るかもとも観客を入れた上映会では言っていた。
ムーアのデビュー作である”ロジャー&ミー”は、(*ロジャーとはGMの社長。会社が史上最高の利益を上げている時に、ムーアの故郷の工場が閉鎖。代わりにメキシコで低賃金の労働者が雇われGMがより儲けようとする)今年公開より20周年を迎えるが、この作品は、トロント映画祭で観客賞を受賞し、以後脚光を浴びた。