ノラ・ジョーンズ、デンジャー・マウスプロデュースの新作披露最新ライブ&セットリスト
2012.05.12 21:55
ノラ・ジョーンズが最新作『リトル・ブロークン・ハーツ』の発売後、ニューヨークでウォームアップ・ギグを行っている。
私が観たのは、ブルックリンの会場ベル・ハウスにて。キャパはわずか500人で、会場のスタッフによるとチケットは6分で売れ切れたという。
この超貴重なライブでは、デンジャー・マウスのプロデュースで話題の新作をアルバムの曲順通り1曲のぞいて全曲演奏。内容的にも非常に貴重なものとなった。
演奏されなかったのは、”4ブロークン・ハーツ”で最新号に掲載のインタビューでは、歌詞の内容が最も激しい曲と書かれているだけに、なぜこれだけ飛ばしたのか気になるところだが。
このアルバムはすでに知られている通り、彼女が18ヶ月付き合ったというフィクション・ライターとの別れをテーマとしている。
実はその前の『ザ・フォール』のほうも長年付き合ったミュージシャンとの別れを描いたものだったので、立て続けに別れのアルバムとなってしまったわけだが、ライブを観てはっきりとしたのは、この作品の視点のほうがさらにシャープであるということ。それがよりシンプルだが強靭なメロディ、洗練されたアレンジによく表れていた。
しかも、歌詞は、上の1曲がなくとも、どれもかなり辛辣で開き直っているとすら言える。例えば、"Miriami”という曲があるんだけど、それはこの曲の中で彼が浮気をした彼女の名前で、「あなたが死ぬまでこの名前を言い続けてあげるわ」「間違えをおかしたこと分かってるわよね/あなたの命を奪う時/私は微笑むのよ」
というかなり踏み込んで彼女の心情を語ったものだ。ぜひ日本盤をお買い上げになって他の歌詞も読んでみるのをお勧めします。
恐らくここまで踏み込めたのは、プロデューサーにブライアン・バートンを信頼していたからだと思うのだ。
またライブで聴いていても、ブライアンのアレンジの素晴らしさにより感動する。微妙なニュアンスや、時に不気味とすら言えるサウンドが絶妙に入って、彼女の声は心地良いままなのだけど、メロディはシャープで、歌詞にはパンチがあり、サウンドは非常に興味深くて、というそのすべての調和を上手く取っているのだ。だから全体としてもより深く、ライブで聴き応えのある内容に仕上がっていた。
ただ、これだけ新作に寄ったライブだと、過去のヒット曲を入れづらいなあ、どうするのだろうと思っていたら、例えば、大ヒット曲の”Don't Know Why”をピアノと彼女のボーカルでこれまで聴いたこともないくらいのシンプルなアレンジで演奏した。ほとんど弱音が出てしまった泣きメロとして響いたので、これにはかなりぐっと来てしまったのだが、この日のテーマにつまりはまっていたのだ。
さらに、アンコールでの、”Sunrise"も、バンド・メンバー全員が中央に集まってアコギでの演奏。このバンドはハーモニーも素晴らしかったので、その調和が発揮された瞬間だった。観客も大合唱となった。
前回のツアーでは、まだ慣れないと言いながら1曲でギターを披露していたが、今回は何曲かで披露。歌詞は数回忘れてしまうこともあり、彼女も笑いながらやり直しをした。地元の観客に時に暖かく見守れながら、ノラ・ジョーンズの力強い新たな出発、とでも言える瞬間に立ち会えたような気がした。
このライブについては、ロッキング・オンのほうで再びレポートさせていただく予定です!