デヴィッドOラッセル新作『Silver Linings Playbook』がキャリア最高に鋭いコメディ! トロント映画祭その5

デヴィッドOラッセル新作『Silver Linings Playbook』がキャリア最高に鋭いコメディ! トロント映画祭その5

去年の『ザ・ファイター』に続くデヴィッドOラッセルの新作『Silver Linings Playbook』が超面白い。文字通り、爆笑の連続でもあり、しかし単純に「コメディ」とくくれないような深さがあって、そこが良いのだ。主人公を演じているブラッドリー・クーパーには、ぜひアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされて欲しいと思うくらいだ。

物語は、妻の浮気相手を殴り殺しそうになって何もかも失ってしまうブラッドリー・クーパー演じる元教師が、自分の人生を建て直すという内容。

裁判所の命令で精神病院に入り、退院したところから始まるのだけど、帰って来ると妻はいないし、家はないし、仕事もないし、自由も奪われている。残るは、フットボール狂いの父(ロバート・デニーロ)と、母(Jackie Weaver)。彼は自分の精神さえ落ち着けば、妻が絶対に自分のところに帰ってきてくれると信じて、ポジティブに生きようとするのだけど、当然上手くいかずそこでドタバタ劇が繰り広げられる。

予告編を観た時から、とにかくブラッドリー・クーパーの台詞が異様に多そうだったので、彼の台詞回しが外していたら、終わりだと思っていたんだけど、これが、すべてはまっていてイチイチ爆笑。しかもその笑いに真実が映し出されていることがあって、笑いながらも、痛いところを突いていると思えるのがスゴいのだ。デヴィッドOラッセルのこれまでの作品の中で、最もシャープな笑いの作品と言っていいと思うし、しかも、広く大衆に受ける作品であるというところがこの作品のパワフルなところだ。

物語は、主人公が、ジェニファー・ローレンス演じる同じように問題を抱えた女性と出会うことで少し方向を変えていく。最終的に笑えて少し泣けるラヴコメとして終わるのだけど、その過程はあまりに型破り。

デヴィッドOラッセルは、去年『ザ・ファイター』を公開して、今年この作品を公開。彼のクオリティの高さにも改めて感動する。アメリカで公開後は、オスカーにノミネートされるかどうか是非注目して欲しい。個人的には、現時点ではダントツで今年一番笑ったコメディだ。

こちら予告編。
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