先週の第7話では、「末永く」という言葉をかみしめながら、ようやく平匡(星野源)もみくり(新垣結衣)も、この思いが「恋」であることを実感した、大切な回だった。車に轢かれそうになった平匡が「死にたくない」と思ったのも、自分の生活に、自分以外の大切な存在がいて、それが自分に幸福をもたらしているということを悟ったからだった。さあ、ここからふたりの恋にドライブがかかる、はずだったのに。これまで女性経験がない平匡は、みくりと一線を越えることを恐れ、みくりはそれを「拒絶」と受け取り、実家へと逃げ出してしまう。
そんななんとも悲しい状況から、今週の第8話は始まった。なぜ、こんなすれ違いが起きてしまったのか。それは、平匡はようやく自分の「恋」を自覚したばかりで、相手の「恋」を思う余裕などひとかけらもなかったからだ。そりゃそうだ、だって初めての恋なわけだから。でも、みくりを一時的に失うことによって、相手の「気持ち」があってこその「恋」だということに気づく。
しかも、恋敵とも言える風見(大谷亮平)の「誰にも理解されないイケメンゆえの恋の悲しみ」を知り、その切なさに初めてふれたことが、大きなきっかけになったことも示唆的だ。誰だって切実な悩みや悲しみを抱えている。それを理解してもらえないやるせなさ。そんな風見の独白により、これまでみくりの気持ちを、知らず知らず自分の定規で測ってしまっていた自分に気づいたのだ。風見の存在は、実は平匡とは裏表の同じコインのようなもので、「誰かに期待することを諦めた」ような生き方は重なる部分も多い。今後、風見の「恋」が何かの形で成就するのを描いていくことが、このドラマのもうひとつのテーマのような気もしている。
『逃げ恥』は、幸せな気持ちで展開していく回には、ラストに必ずトラブルが巻き起こり、うまくいかずに落ち込む展開の回には、ラストは必ず明るい兆しを用意して、次週につなげてくれる。この気持ちのアップダウンこそが「恋」そのものだし、人生そのものだなあとも思う。(杉浦美恵)