いやあ、最高。掛け値なしに素晴らしかった。
元イエスのジョン・アンダーソン/トレヴァー・ラビン/リック・ウェイクマンが「ARW(アンダーソン・ラビン・ウェイクマン)」という新プロジェクトとしてイエスの楽曲を演奏する――というツアーが発表された際も、約30年前の「当時のイエスを脱退して旧メンバーを招集→ABWH結成」というジョン・アンダーソンの行動との一致ぶりに、思わず苦笑を禁じ得なかった。
つい先日の「ロックの殿堂」授賞式直後に飛び出したジョン・アンダーソンの「イエス宣言」により、今回の来日公演が「イエス・フィーチャリング・ジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン」名義になった(会場のポスターは「ARW」のままだったが、UDOサイトのロゴはすでに「YES feat. ARW」に差し替わっている)と知った時も、スティーヴ・ハウらを擁する「本家」含め「ふたつのイエス」の存在に釈然としないものを感じていた。
しかし――イエスの象徴とも言える「天使の歌声」アンダーソンと、卓越したプレイアビリティを誇るラビン&ウェイクマンが織り成すアンサンブルは、そんなこっち側のもやもやを綺麗さっぱり吹っ飛ばすだけのスケール感と色彩感に満ちていた。
何より、ビル・ブルフォード的なセンスも持ち合わせたドラマー=ルイ・モリノ3世が繰り出すビートが、ラビン&ウェイクマンの演奏としなやかにギアを合わせて、壮大で緻密なイエスの音楽世界に(「本家」より格段に強烈な)グルーヴ感をもたらしていたのが印象的だった。
72歳にして微塵も衰えを知らないジョン・アンダーソンのハイトーンヴォイスには感激しかなかったし、オーチャードホールの客席を見上げて「ウツクシイ!」と連呼し、時折 ♪ゾーウサン、ゾーウサン…とか ♪ドングリコロコロ…とか何の前触れもなく歌い出す天真爛漫ぶりには「ああそうだよなあ、やっぱりこの人がイエスの曲の歌い手だよなあ」と素直に思わされた。
まだジャパンツアー初日なのでネタバレは避けるが、トレヴァー・ラビン期の楽曲が(「あの曲」含め)少なからず盛り込まれていて、それがウェイクマンのキーボードと絶妙にハモっていたのが新鮮だった。
マント姿のリック・ウェイクマンがショルダーキーボードを構えて、トレヴァー・ラビンと一緒に客席を練り歩く――といったレアな場面も見られた「イエス」ツアー初日。同じくオーチャードホールにて明日・明後日と続く東京公演は今ならまだ残席あるようなので、興味ある方はぜひ。(高橋智樹)