「音楽を作っている時、常に問いかけているのは『俺たちはこれを好きか?お前は好きか? 自分は好きか?』ということ。次の進化は、純粋にその問いに対して自分たちが『イエス、俺たちはこれが好きだ。これを楽しんでる』と答えられるかどうかにかかっているんだ」
トゥエンティ・ワン・パイロッツの約3年ぶり6枚目のアルバム『スケイルド・アンド・アイシー』は、「Scaled Back And Isolated=縮小して孤立した」の言葉遊びであるタイトルにも明らかなように、パンデミックの影響をもろに受けたロックダウン・アルバムとして制作された。
しかしアメリカの東と西に離れて住むタイラーとジョシュはその状況をものともせず、むしろこれまで以上に親密な、二人の絆を感じさせるアルバムを作り上げている。冒頭の“グッド・デイ”でザ・ビートルズもかくやのメロディに早くも驚かされるが、憂鬱や孤独に苛まれたパンデミックの世界に向けて、彼らは敢えて軽快でポジティブなサウンドで応えようとしたのだ。ダーク&タフに計算され尽くした『ブラーリーフェイス』、『トレンチ』で天下を獲った彼らを思えば、本作は無防備にすら聞こえるが、レトロ風味のディスコ・ファンクからカラフルなエレクトロ、さらにはフォーキーなローファイ・ポップまで、無防備で開けっぴろげだからこそT ØP本来の曲の良さが際立つ。ビルボード初登場3位。ロック・アクトの苦戦が常態化したアメリカで、またもや際立った存在感を示したアルバムでもある。 (粉川しの)
トゥエンティ・ワン・パイロッツの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。